
ダークイヤー
2022年12月 5日
結局三年たってもコロナの終息は見られず、令和四年も終わろうとしている。長いようで、慣れて過ぎてしまえばあっという間で、また「一年は速いね」という常套句の挨拶を交わしあう時期となった。この一年、国内外共に暗いニュースの多い年だった。 今年は

思い出を呼び起こす
2022年11月 7日
フランシス・コッポラの映画『ゴッドファーザー』全三部作が、三週連続BSで放送された。第一作公開から五十周年記念企画だったらしい。半世紀の時を経ても褪せることのない大作だ。テーマ曲『ゴッドファーザー愛のテーマ』の美しくも物悲しい旋律は、裏社

グレイヘア
2022年10月 3日
ある時ふと、グレイヘアにしたいと思った。 近藤サトさんが火付け役だったろうか。『白髪をあえて染めない生き方』なるものに多くの共感が寄せられている。まだ五十代なのに白髪をそのままにしておくなんて、しかも人前に立つ仕事をなさっているにもかかわ

何がどうなろうと
2022年9月 5日
先日珍しく古本ではなく、本屋で新しい本を購入した。『流転の海 読本』。宮本輝著『流転の海』のガイドブックだ。『流転の海』を読破した人も、これから読む人も、読んでいる途中の人も、これがあれば頭を整理しながら読み進むことが出来るだろう。 昨年

引 き 際
2022年8月 1日
潮時、引き際を見極めるのは簡単なようで難しい。独断できる場合はいいが、置かれた状況との兼ね合いもある。「もうや~めた」と仕事仲間に迷惑をかける人は困る。 先日私の福祉事業所の調理担当員が突然辞めた。まだ六十代半ば。ある不安材料を抱えながら

七十四歳の新人
2022年7月 4日
「そんなに履歴書を汚すもんじゃない」 昭和の時代、年配の管理職の男性が中途退職する若い社員に話すのを耳にしたことがある。汚すとは、転職により履歴書の経歴欄に入社と退職の行数が増えることを意味していた。 最近の調査で、新卒で入社した会社を定

思い出、泣き笑い
2022年6月 6日
『ブレーメンの音楽隊』はドイツのグリム童話の中の一つだ。ロバの上に犬が乗って、その上に猫、その上に鶏が乗っている挿絵は、あまりにも有名だ。それを見るたびに、遠い思い出が蘇り私は涙目になる。 中学生のころ部活は英語クラブに入っていた。顧問の

出会いのないロマンス
2022年5月 9日
「私結婚するんです」 爆弾宣言だった。彼女は齢五十歳。独身、結婚歴無し。これまで交際歴無し。恋愛には疎い人なのかと思っていた。 いきなりの告白で、反射的におめでとうの一言が出たものの、私の顔はきっと驚くというより引きつっていたかもしれない

無
2022年4月 4日
知人の愛犬が亡くなった。十四歳。寿命かもしれないが、家族を失う悲しみほど辛いものはない。電話の向こうから聞こえる涙声の訃報に、返す言葉は見つからない。最期を見送ってねと短く告げることしかできなかった。 数年前、私も愛情を注いできた愛犬を失

平等という儚さ
2022年3月 7日
平等という言葉をよく口にする人がいる。実は障がい福祉の仕事をしている私もそうだ。日頃職員には「利用者への支援は常に平等を考えて」と伝えている。とりわけ聴覚障害者への配慮は十分すぎるほど気を付けている。健聴者と同様に情報が伝わるように。聴覚