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エッセイSP(スペシャル)

道案内

冴木 あさみ

2023年8月 7日

 ある日の仕事帰り。その日も気温が三十度を超え、西日が肌を刺すように痛かった。ありがたいことに札幌には地下街があって、雨の日も、吹雪の日も、そしてこんな猛暑からも市民を守ってくれる。
 急いで地下に潜り、アクセサリー店などを眺めながら涼をとっていた。ややあって、入店した客とレジの店員がぼそぼそと話す声が聞こえてきた。外国人客が道を聞いているようだった。若い女性店員は全く英語ができず、目を白黒させているばかり。
 そこに恥の薄れてきたおばさん(私)の登場だ。ろくに英語も話せないくせに、困っている人に協力しなければという気持ちが優位に立った。後先のことを考えず、どこへ行くのかと口をはさんでしまった。
 旅行客はすぐさま、こっちのおばさんの方が役に立ちそうと思ったのだろう。彼女は私に向き直り、目的の店の名を言う。OK、そこならばよく知っている。手ごろな価格なので私も何度かそこで服を買ったこともある。
 ところが、問題はここからだ。誰もがこんな経験をしたことがあるに違いない。人に空で道を教えるのは簡単なようで難しいのだ。現在地から何本目の通りなのか、信号機を何回渡るのか、目印となるポイントさえ知らない人に正確に伝えるのは至難の業だ。スマホの時代なのだから自分で検索すればいいのにと思いながら、彼女はぐいぐいすがってくる。
 若い店員がやっとスマホを取り出し検索してくれた。焦っているのか地図を大きくしたり小さくしたり、挙句に画面に青い輪っかがグルグル回り始め役に立たない。
 私もちょっと混乱してきて、確か丸井今井のはす向かいだから...と説明しだすと、店員がなぜかきっぱりと発言する。
「パルコの向かいです!」
 そうだっけ? 札幌の街もどんどん様変わりしているから、移転したのか?
「まずは真っすぐ行ってポールタウンに入って、左手にパルコがあるので地上に上がって...」
 半信半疑のまま説明する。アジア系の女性三人組は、実は皆あまり英語を話せないことが分かった。
 途中まで付いて行ったが、店を出るとうだるような暑さと人ごみにくらくらしてきて、現地まで彼女たちを連れていく気力はなかった。
 おもてなしをアピールしてきた日本なのに、とことん親切に対応できなくてすみません。北海道民は猛暑に弱いんです、悪く思わないで。帰宅してから彼女たちへの申し訳ない思いがさらに増幅していった。グーグルマップで検索したら、パルコの向かいにその店はなかった。

◎プロフィール

●作者近況
さえき あさみ
地球沸騰化(global boiling)の時代に入ったそうだ。危機感溢れるネーミングがすごいと思った。

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