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エッセイSP(スペシャル)

もう一つの目

冴木 あさみ

2024年5月 6日

 ある朝、気づいた。札幌の地上へと上がるエレベーターの中で、ドアに貼られたステッカーである。
"あぶないよ  ドアにさわらないでね "
 子供が手を出して怪我をしないよう、注意喚起のステッカーだ。ほぼ毎日目にしていたにもかかわらず、このステッカーが大人の目線に貼られていることに今さら気付いたのだ。私の身長が162センチなので、目線の高さとなると床から150センチぐらい。子供には見えない高さだ。子どもを連れた大人に対する注意書きですと反論されれば、文言がひらがなでイラストが子供向けであっても、私は納得せざるをえないだろう。
 あるものの立場に立ってみることは様々な場面で大切だ。しかし誰もがそうたやすくできることではない。できる人であっても、心の余裕を失った状況では難しい場合もある。

 私の勤める福祉事業所の半数が聴覚障害者だ。報告は必ず彼らの顔を見て手話を交える。しかし時に、小さなお知らせがあるとき、作業所内に散らばって仕事をしている利用者全体にきちんと行き渡らない場合もある。例えば先日の失敗談。
「今日のお昼、食べたい人だけ山菜のお浸しあるからね!」
 理事長が昼前に声を発した。ご近所からもらった山菜らしい。全員に提供できない量なので、希望者にのみという。しかもほんのわずかな一口。食べない人から不満が出るほどの量でもないと、理事長は軽い気持ちだったに違いない。
 仕事中の仕事に関係ない発言だったので、私は正直面倒くさいという気になっていた。さっと部屋を軽く回って手話で伝えたつもりだった。それが昼食時になり問題と化す。
「あれは何?」から始まって、山菜? 聞いていない。誰が食べられるの? そんな話いつしたの?...
 たとえ些細な情報であっても平等を心掛けていたはずなのに、こんな事が起こってしまう。

 以前札幌市の地下鉄大通駅の休憩スペースで、青少年の飲酒、喫煙を伴った問題行動が起きた。警備員が常駐し、警察も何度も出動することとなった。結果、イスとテーブルが撤去された。
「居場所がない。ここには仲間がいる」
 彼らの言い分だ。
 そんな境遇を気の毒とは思うが、彼らには公共の場での迷惑行為が周囲の人々にどういう影響を与えているのか想像する能力、第三者の立場に立って見るためのもう一つの目が欠損している。

 パワハラ、カスハラ、モラハラ。今や、あらゆるハラスメントに厳しい時代となった。おもてなしの国、日本に生きる私達。おもてなしは、相手の立場に立つことから生まれるものだ。

◎プロフィール

<作者近況> さえき あさみ
ぼーっとしていたら春になっていた。季節ものの整理はいつも面倒くさい。

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