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エッセイSP(スペシャル)

眠りの一歩前

冴木 あさみ

2023年7月 3日

 だいぶ昔の漫才のネタで、地下鉄の車両をどうやって地下に入れるのかを考えると夜眠れなくなるというのがあり、大いに笑いをとった。
「地上に通じる線路があって、そこから出し入れするに決まってるじゃん」
 十人いたら一人くらい真顔でそう答える人がいそうな気がする。ひょっとしたら、空気の読めない人と思われているかもしれない。
 どうにも不思議で自分の力では答えが見つからず、しかもその疑問が脳に張り付いたまま剝がれない。考え始めると眠れないという経験は誰にもあるだろう。この漫才のネタが人々の心をつかんだのは「あるある、そういう経験」という共感の笑いだ。答えが分かると、結構単純で取るに足らないものだったりする。夜には人を悩ます魔力が潜んでいる。朝になると消え去ってしまうのが不思議だ。
 尤も今では時と場所を選ばずにググることが可能になったので、睡眠を阻害されるほど悩む人も相当減っただろう。
「死んだらどうなるのか、それを考え出すと夜も眠れなくなる」
 ある人が雑談の中でポロリと言った。まだ先のある健康な男性だ。そんな繊細なことを考える人とはつゆ知らず。
「なにも今考える必要はないでしょう」
「そうだ、死んでから考えなさい」
 彼の意外な一面を知ったことで、その場の話は大いに盛り上がった。
 生きているうちに答えが出ない疑問は、考えてもしょうがない。輪廻転生も死後の世界も私は信じていないけど、もし魂が残るとしたら宇宙に漂い、その全容を見ることができたらさぞ興奮するだろうなと思う。魂に目はないだろうが。
 なんといっても宇宙は人知を超えた未知の空間というのが素晴らしい。宇宙において人間はもちろん地球すら存在しつつも無といえる。宇宙に心を寄せて目をつぶると、空想の魂が無数の銀河の間を飛んでいく。宇宙の果てはすぐそこだ、その先はいったいどうなっているのだ?
 私もだてに年を取ってきたわけではない。最先端の技術で世界中の学者の英知をもってしても解明に至っていないことを、星座一つ探せない私に分かるわけはない。そう切り替えて疑問の苦悩をファンタジーに変換する能力を身につけたのだ。しかし宇宙の果てらしき場所の手前でやはり現実に戻ってしまう。
「光速を超えるものはないのに、魂はどうやって宇宙の果てに辿りつけるのか」
 止めた。それこそ死んでから考えるべき課題だ。
 眠りに入るひとときは安らかであるべきだ。そして眠れる安寧ほど感謝すべきことはない。

◎プロフィール

三週間ぶりに卵を買うことができた。冷蔵庫の定位置に卵がないと心に隙間風が吹くことを知った。

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