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エッセイSP(スペシャル)

ウルサイオトコトイラヌオトコ

梅津 邦博

2023年6月12日

 出張していた道央の然る街の居酒屋カウンターにいた。混んでいたが、ぼくの隣には男女の二人連れがいてともに50代か。その男が実によく喋っているではないか。その為に女は相槌を打ちつづけている。とにかく話しつづけていて時々間が入るなんてことがほとんどない。ずーっと話をしている。もしかして人間そっくりに作られたAIロボットではないのか。
 男の顔をそれとなくチラリと見たら、ふーむ、本物の人間に見えるな、と思った。隣の細身で漆黒のセミロングヘアが美しくて品がよさそうな女性はいったいどう思っているのだろうか、と思って悪趣味ではないけどそれとなく窺って観る。どんな関係なのかぼくには知る由もないけれど、よけいなことだがどう見たってそぐわない感じがするカップルという気がしてならない。そしてお互いに気遣っているようで、いうなれば出合って日が浅いというふうにしか見えない。あきらかにロボの方は女に惚れているようで面白い話をしているようなのだが、聞いていると言葉が荒い。「ヤバイベヤ」「ナニイッテンダョオ」とか、誰かとの話の内容をしゃべっているらしい。彼女の方ではそれなりに明るい顔で応対しているようなのだが、ホントはどうなのだろうか。とにかくもう少し女性のことを考えてやったらいいのになあとも思う。
 別にセンサクしているつもりはないし余計なことだが。ぼくとしては暦の上でもようやく訪れた春を一人で祝いたいのとちょっと考え事をしたいのとで、おでんを肴にビールをと思って来たのだが、なんだかもうそれどころではない。そのオシャベリロボはいったん中断してトイレにでも行き、思考回路のメンテナンスでもしてくれないかなと思う。
 けっきょくロボは喋り通して終わったらしく、女に、
 「ジャ、ソロソロデマスカ」
 と促すように言った。
 (あのさ、店を出るにしてもその前にトイレでも行ったほうがいいよ。そうしなさいよ。そんなセカセカしたっていいことなんかないんだよ)と思ったが、会計に当たってロボは革財布から1万円札ではなく、千円札数枚と小銭を出して数えて払い、二人は出ていった。
 いやはや男と女の二人で酒肴を楽しみながらなのに、ロボが一方的におよそ90%くらい喋りつづけて(女の方は相槌程度だから10パーセントくらいか)、ジャ、ソロソロデマスカもないだろうと思うのだが。相手はそんなことで楽しいわけがないのではないか。だからぼくとしてはロボがトイレにでも立ったときに雰囲気を変えるべく5分くらい何かちょっとしたことでも話ししてみたいと期待していたのだが。イヤハヤ、オレモイラヌオセッカイオトコダナ。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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