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エッセイSP(スペシャル)

それぞれの事情

冴木 あさみ

2023年2月 6日

 今年の正月午前零時四十分。私は京都東山区智積院の境内で除夜の鐘を打った。もやもやしていた事が、大きな鐘の響きと波動で一気に消え去ったようだ。今年は慎重な性格でありつつも、これと決めた道をグイグイ進もう。重いガウンを脱ぎ捨て、晴れ晴れと今年が始まったのだ。
 一方仕事で近しい知人は同じ元日、信号で停車中に後続車に追突された。結構スリルある運転をする彼女ではあるが、これまで大きな事故には至っていなかった。運がいいとしか言えず「こんな事に大事な運を無駄遣いして」と、私はいつも小言を言っていたのだが、被害者になるとは不運だ。車は買い替えが必要となり、軽傷とはいえ通院と車探しと保険会社との連絡で今も落ち着かない。
 高齢者の免許返納がしばしば取り上げられている。この場でエッセイを担当している方も、返納したお話を以前書かれていた。私は地下鉄駅近くのマンションに越したのを機に、高齢者になる前に車を処分した。運転が好きで車のない生活は考えられなかったので、苦渋の決断であった。しかし慣れるもので、以来レンタカーもタクシーもほとんど利用していない。公共交通機関が充実している都市生活の恩恵を受けているのである。
 地方に住む知人の母親は、なんと還暦を機に運転免許を取得したという。しかも家族に内緒で車まで買ってしまった。もちろん家族は全員驚愕し猛反対したのだが、夫に先立たれ、子供たちも都会へ出て戻らない。移動手段がなければ、幽閉といっても過言ではない孤独な老後を送ることになる。母を案じ、運転範囲は田舎の交通量のない道路に限ることを約束に、しぶしぶ許さざるをえなかったとのこと。
 高齢者の運転は私も反対の立場ではあるが、人とその人の暮らす環境によって事情は異なる。知人の母親同様、人里離れたぽつんと一軒家暮らしの人は、しょうがないと思うしかない。他人を巻き込む事故が問題なのであって、単独事故で本人が死亡した場合、諦めるしかないのだろう。期待する自動運転機能の車も、信頼できるほどの実績が得られ、技術開発と共に法律も抜け目なく追従できなければ安心して利用するまでには至らない。子供のころ二〇三〇年ごろには、透明な筒の中を車が自動操縦で走行する大都市を想像していたが、そうはならない気がする。

◎プロフィール

三年ぶりのさっぽろ雪まつり。札幌市民は雪まつりに行かないと言われているが、私は行きます。ちらっとですが。

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