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エッセイSP(スペシャル)

あずき・・

たかやまじゅん

2022年10月17日

 和菓子の一つに餡ものがある。幼い日、祖母が小豆を煮ておやつに羊羹、春はぼたもち、秋にはおはぎを作ってくれた。その甘さは、口中に拡がると気持ちが癒され、口福をもたらしてくれたことを思い出す。
 この小豆の国内三大産地が「北海道、丹波、備中」、中でも北海道は国内の80%以上に至り、道東の十勝地方は65%を占める一大収穫地である。本州のお土産品で、和菓子の原料産地に、〝北海道産〟の文字があると誇らしく思う。まして、十勝で二大菓子メーカーの六花亭と柳月は、以前の朝ドラでモデルにもなったほど全国的にその名を知られている。
 かつて帯広に8年ほど住んだ頃、身近で小豆について見聞きをした。例えば大納言は、煮た時に皮が破れ難いことで、武士のように腹を切ることもなく、切腹の習慣がない公家の最高位〝大納言〟に由来し、小粒なのが中納言や少納言と識った。
 和菓子でも、京都には菓子司(かしつかさ)と書かれた屋号が多い。この司とは宮中に仕える職位であり、公家に納める時や茶会で出されるため、白い砂糖を使うことが許されたことを意味するそうで、小豆は丹波産となり、やはり老舗で趣が違う。
 今年話題となった朝ドラは、岡山の和菓子店で三代に亘る物語だった。備中産の小豆を炊くとき、「小豆の声を聴け」「おいしゅうなれ」のおまじないは、食べる人に思いを馳せて作る職人気質が描かれていた。これは相手を思いやる気持ちとして、どんな場面にも通じるものと印象深い。
 小豆は縄文時代からあって、平安時代にアズキのアは魔除けの〝赤〟を表し、ハレの日の赤飯やあずき粥にも繋がる。大きさが大豆より小さいので小豆と書かれ、あずきと呼ばれてきた。
 石炭の黒いダイヤ、数の子の黄色いダイヤと並んで赤いダイヤと呼ばれ、天候や収穫量で価格が左右され易い。かつてテレビや映画で、商品先物取引の小豆相場を描く梶山季之の小説「赤いダイヤ」があった。
 子どもの頃、近所の女の子が遊んでいたお手玉の中身は小豆、夏になると食べたくなるのが井村屋のあずきバー。アニメの鬼太郎でシャキシャキと小豆を洗う「あずき洗い」の話は各地に伝承が遺された。
 食文化を語る上で小豆は脇役だが、周りを引き立たせる秘めたるポテンシャルは、昔も今も計り知れないものがある。

◎プロフィール

〈このごろ〉人と接する時は別として、建物や交通機関以外ではマスクを外している。行き交う人にも増え、顔が見えることで人は繋がって行く。

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