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エッセイSP(スペシャル)

暗い天気の日の落ち込み

梅津 邦博

2022年10月10日

 曇りや雨の日など、外を眺めていると気分が暗く沈んでしまう。どんよりとしているような空間に閉じ込められているのだった。意識の両端に小さく晴れ渡っている十勝ロケーションや日本海海辺の光景などがあって、ビィーっと懸命に引っ張り出そうとしているが、なかなか上手くいかない。灰色のベールが重く覆い被さっていて取り払うことが出来ないでいる。晴れた日になってくれないとどうしようもない。
 ある作家の作品には家のトイレの窓から見る雨降り情景が好きらしいようなことが書かれてあって、読んでいる側としては湿気た場所でのことだけにいい気がしない。その作家は、どこかおかしいのではないかと病的なイメージがしないわけではないのだが。しかし、ま、なんとなくわからないわけでもないけれど旨く説明できない。その作品を高く評価される某巨匠が「とてもいい作品だ」と述べているところを見ると、ぼくの方がわかっていないということになるのかもしれないとも思ってしまうのだが。映画やドラマで抒情的に訴えるシーンがあってそういうところなどはわからなくはないが。
 少年時代は夏になるといつも太陽の光を浴びながら遊んでいただろう。真っ青な空から陽の光があふれている札内川で水に戯れて過ごしていた。陽射しが水面下に射し込んでいるなかをぼくは潜ってゆく。光がヤマベやニジマスなどの銀鱗に当たって水銀みたいに照り返しているそのあまりな耀きの美しさに気が遠くなってゆく気分がするのだ。ダイヤモンドなどが光り輝くといってもそれと比較したら次元があまりにも違う話で、もしかして太陽の次にでも位置するかも知れない大いなる生命の耀きなのだった。
 ともかく静っとしているなど不健康だ。雨が止んで空に明るみが現れて来たら、ちょっと外へ出掛けたい。
 家の者に、
 「あのさ、出かけるから晩ご飯はいいよ...」
 「何処へ行くの、また飲みに行くのかい?」
 「いや、ま、ちょっとな...なんていうか、精神の奥でどこか明かりを求めているのだろうな」
 訳のわからないことを呟いてしまう。
 小さめのショルダーバッグに夕刊を八つ折にしたのとペンとA4のコピー用紙を半折したのと眼鏡を入れてある。裏口から出てカギを掛ける。歩き出すと、ふっと解放感が湧き上がって気分が少しはふわっとラクになってゆく。自由を求めて脱出した。オレはワガママなのかな...。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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