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エッセイSP(スペシャル)

発展途上人

吉田 政勝

2022年9月26日

 新聞を開いていると、ある見出し記事に目がとまった。「婚姻件数が戦後最少の50万件で、結婚離れが進んでいる」というもの。
 本文を読んでみると「男性の4人に1人、女性の6人に1人が生涯未婚とされる時代をむかえている」と厚生労働省が公表した昨年の人口動態統計で判明。婚姻のピークは団塊世代が25歳前後となった1972年で、今は半分以下にまで減少している。
 仕事でのキャリアアップなど、結婚よりも、自分の時間を大事にしたいという価値観が広まったともいえる。格差社会も広がり、結婚生活を支える経済力に不安を抱くケースもあると推察できる。また結婚後も働く女性の育児や家事負担も大きい。これらを軽減する社会の仕組みが必要とされるが、改善は進まない。北欧やフランスなどでは政策により少子化を克服している。そんな事例を日本でも取入れたらと思うものの政治はままならない。
 卑近な例で自分のことをふり返った。若い時は、経済力に不安を抱えていたので、自分一人で生きるのが精いっぱいだった。親から援助を受けられない貧しさがあったので、私は働きながら学んできた。高校もデザイン学校も夜学だった。くわえてアメリカの商業美術の通信教育も受講し、ローンの受講費もかかえていた。一人前になるには発展途上の若者だった。結婚する夢はおのずと先延ばしだった。
 そんな私だが、女性を紹介してくれるお節介な先輩や友だちがいた。彼女とお茶を飲み、食事をするがデートがつづかない。ドライブをしたり、送迎する車がない。ふたりの仲が進展しても彼女の未来を背負うことに自信がなく、無意識に深入りする事を避けていた私に彼女は感づいた。「あなたと私の未来は描かれない......」と駅前の喫茶店で別れをほのめかされた。彼女は手を小さくふって街の灯りに紛れ込んだ。郊外から通っていた彼女はバスの便もなくなっていたはず。タクシー代を渡す配慮もなく、後で気づいて恥じ入った。恥を重ねながら成長してきたが、いまだ発展途上人を自覚することがある。

◎プロフィール

心況(よしだまさかつ)
「結婚しても、結婚しないでも君は後悔するだろう」と哲学者キルケゴール/商業デザイン、コピーライター、派遣業務などを遍歴。趣味は読書と映画鑑賞。

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