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エッセイSP(スペシャル)

食堂はどこにあるのか

梅津 邦博

2022年3月14日

 ある日のお昼時。母上が、
 「御飯がないからどこかへ食べに行こう」
 と当然のごとく言った。時折そういうことがあるのだ。そして本人の頭には、天丼か、親子丼か、はたまたパスタだとかなどが浮かんでいるに違いない。
 「なに、ご飯がないってか...。『サッポロ一番みそラーメン』やパック入りの『北海道産ななつぼしごはん』もあるはずだがなぁ...」
 「...」
 面白くない顔をしている。
 「外食するほどでもないだろ、たまにオレも何か作るか?」
 聞こえないフリをしている。
 とにかく冷蔵庫を開けてみる。何がいいかと思案するのだが...。たいして料理は出来ないしチャーハンでも作ろうかと思うが、そういうのはあまり食べないしなぁ...。
 「そうか、じゃ...行ってくるか」
 と言ったら、途端に母上は仕度する。 車を走らせながらもどこへ行っていいのかわからない。どこに食堂があるのか。
 「街中へ行ったって車を駐めるところがないし、南の方へ行ったら駐める所もあるし」
 「え、なに、それはどこだ...いや、どこへ行ったって駐車スペースなどそれなりにあるべゃ」
 「...」
 「とにかく何処へ行く? え?」
 と、訊いても、ま、どこかにはあるだろうけどよくは知らない。いわゆる豚丼、天ぷら、とんかつ、ラーメンだとかそういう〈特化した店〉はたくさんあるけれど面白くない。
 あちこち走ってゆくがそれらしい店はたいして見当たらない。行きたいのは昔からある食堂なのだが、なかなかないらしい。いったいどうしたのだと言いたくなる。
 以前はあったのだ。「たん吉」「味の十八番」「味のや」「春駒食堂」他。しかし高齢になったとかなどでいつしか引退されたのだろう。昭和が消えてゆくという言い方もあるが、ぼくの頭が古いとか時代遅れだとかのようなことではない。そういった以上の思いがあるのだった。けっきょく走り回ってもしょうがないので、鉄南の豚丼屋に入った。ときおり行っている店で本当に旨い店なのだけれど、でもやはり食堂がないというのは物足りないのだった。
 なぜ昔の食堂がいいのかというと、なんといっても古き良き店の歴史性に魅力を感じるのではないか。メニューも店に由るけれど、丼物、麺類、洋食、トンカツ、カレー、そば、うどんなど、いろいろあるところがほっとして納得してしまう。つまり店が古くていろんな料理があるということは、バラェティや人生でもあるのではないか。あれこれとさまざまな感があるのだった。そして店のおやじさんには利かん気があったり穏やかでもあったりし、おかみさんはてきぱきと店を切り盛りしているところもいいのだ。 だから食後のお茶もうまいのだった。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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