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エッセイSP(スペシャル)

子どもたち

吉田 政勝

2021年10月25日

 フリーライターである私の取材対象者は、ほとんどが大人だが、時々子どもたちの取材もある。子どもといっても園児や小学生だ。そんな取材前には、気持ちがウキウキする。
 子どもたちの笑顔と背景をフレーム内にうまく配置させて写真を撮りたいと考える。
 10月上旬、前夜は雨だったので、屋外での撮影は天気が気になる。当日はまぶしいほどに晴れた。町郊外のMリンゴ果樹園に向かった。近くの幼稚園から300メートルほど歩いて来た園児たちに、M代表の手渡しで収穫されたリンゴがプレゼントされる。
 直売所で代表にあいさつをして、「ぼくが写した前回の写真、どうでしたか」と訊いた。すると代表は「よかったよ。今回はちがう構図で撮ってもいいかな」との意見。良い仕事をするには周りの要望も考慮しなければならない。リンゴの種類と収穫時期を手帳に記していると、青い帽子の園児の行列が坂道を歩いてやってきた。
 カメラを構えて、リンゴの手渡し場面を数枚撮った。再生で確かめると、日差しが強いせいか帽子のツバが顔に影をつくっていた。露出を変え、昼間だがストロボを光らせた。撮影のたびに子どもたちに声をかけて、笑顔がいいよ、ありがとう、と声をかけた。
 直売所で試食のリンゴを食べて、代表に向かって全員で声を合わせてお礼を伝えると園児らは帰ってゆく。私は「この後の給食が楽しみだね」と声をかけていると、5歳の子が寄ってきて、私を見上げると両腕をいっぱいに広げた。抱いて~と望んでいるのが分かった。私は腰を低くして両腕をその子の背中にまわすとハグしていた。マスク顔の私だが目を見合わせると、お互いに笑顔になった。ほんの一瞬の出来事だった。
 果樹園の小道を手をつないで園児たちはおりてゆく。そのうしろ姿をカメラに撮りながら、映画のラストシーンの情景に想えた。車道に出るとその群れは小さくなった。私の胸には、その子の笑顔が刻まれたままだ。
 何が起こったのだろう。あの子の胸で......。帰りの車の中であれこれと想像していた。

◎プロフィール

商業デザイン、コピーライター、派遣業務などを遍歴。趣味は読書と映画鑑賞。

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