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エッセイSP(スペシャル)

笑顔・・

たかやまじゅん

2021年5月24日

 幼い日、歯医者で白い布に覆われた顔が目の前に迫ってくると怖かった。治療が終わりマスクを外した先生の笑顔を見てホッとした覚えがある。
 日ごろ風邪で咳が止まらないとき以外は使うことのないマスクが、まさか生活の一部になろうとは想像だにしなかった。ある日、札幌の地下遊歩道を往くとマスクをした女性から声を掛けられた。知った顔のようだが名前が出てこない。誰だったかな、何処逢ったのだろうと頭の中で思いめぐらすのだった。初対面にしてもマスク越しに挨拶程度、果たして再会しても直ぐに分かるかどうか、いささか心もとなく感じていた。
 いま同世代の間で人の名前を思い出し難いと話題になる。年齢を重ねてきたこともひとつだが、自粛が続きお茶や飲み会など人と接する機会の多くが失われ、疎遠になりつつあることも否めない。それを察したのか「どこどこのダレダレです」と言われ、ようやく利用する書店の人だと分かった。まして私服であったことで、日ごろ見掛ける姿と違う印象を受けたことも重なり、戸惑ってしまったのだ。
 最近、販売業での自動化が進み商品を探すときは検索機、会計の際にはセルフレジを導入している。さらにあらゆる場面で感染防止のカバーや間仕切りがされて、何か訊くのも躊躇し店の人との会話も控えるようになり、ますます売り手と買い手の間が隔たってしまう。
 社会人として最初に教えられたことは笑顔であった。人と接することが多い仕事では、この笑顔が第一で、顔の表情を見て繋がりを保て、これがサービスのひとつだと教えられてきた。私が買い物や飲食するときは、たった一個の品、一杯のコーヒーでも笑顔のある店に入る。たとえマスクをしていても目の表情から笑顔が伝わり、諺の「目は口ほどに物を言う」とあるように、これがサービスという付加価値になりそこにまた足を運ぶ。
 いま街を歩くと白ばかりだったマスクが、青やピンクなど色とりどりになって、柄の付いたのも見掛けファッション化した感じがする。マスクは紀元前のギリシャに遡り、鉱山などで働く人がヤギの膀胱で顔を覆ったのに始まって、日本では明治時代に工場の作業用や流行性感冒が流行り、ガーゼで作られたのが普及され今に至るそうな。
 そして人と人を繋ぐ筈の笑顔を蒸発させてしまったマスク生活は、あと2年ほど続くようなことが言われている・・。

◎プロフィール

〈このごろ〉運転免許証の更新時期で高齢者講習になる。実車指導があり自動車教習所で55年ぶりにコースを走った。

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