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エッセイSP(スペシャル)

旅の始まりはうどん

冴木 あさみ

2021年5月10日

 一年ぶりの新千歳空港。いつも離陸一時間前にチェックインを済ませ、フードコートにうどんを食べに行く。旅立つ日の外食一食目はここのうどんに決めている。胃に優しいし、美味しいし、店のトレードマークの赤い花マルがいい。今から始まる旅が二重マルの大ハッピーになる予感に包まれるからだ。
 今回はコロナ禍で延び延びになっていた京都での用事のために出かけた。関西に変異株の感染者が急増する直前、ぎりぎりセーフの日程だったと胸をなでおろしている。もちろん帰宅後の十日間は仕事中もなるべく人との距離を保ち、最低限の会話で済ませ、自分は感染者かもしれないという前提で過ごした。
 緊張の日々だったが、思い起こせば二時間程度家族と静かに食事を共にした以外、ほとんど誰とも話していないし、観光も徒歩で人気のない街歩き。いたるところに消毒液が常備されているし、バスは数分間で、飛行機も一定時間で空気が入れ替わるというから安全を信じている。
 旅の楽しみはその地のご当地ご飯。街歩きの最中、良さげな店をチェックしておく。夕食はここかな? そのあとの一杯はこの店にしようかな。
 古都は何気ない街並みが一番の名所だ。一日二万歩近く名もなき裏道を散策すると足は棒になる。でも夜のビールで喉を潤す想像をすると、不思議と疲れは感じない。夜のとばりを待ってロックオンした店へと急ぐ。が、入り口前で足が硬直し、浮かれ気分は一気に消沈した。ガラス越しに見える店内は、満員電車さながらの客の入り様で、全員マスク無しで歓談している。顔と顔の距離数十センチ。しかも関西人はよくしゃべる。
 最新スーパーコンピュータ富岳による飛沫の拡散シュミレーションを何度もテレビで報道していたが、あんなものを見せられたら人間=汚いというイメージが染み付いてしまう。ドラマも映画も、大声の掛け合いや、顔を近づけて話すシーンを見るたび飛沫が見える。もちろん実際に見えてなどいない。でも心で見えてしまうのだ。まるで霊能者にそれがしが見えるかのように。
 件の京都の居酒屋で皆ワッハッハと笑っていた。仕事の後の一杯は最高だ。週末ともなればなおさら。盛り上がるボルテージに比例して、相手の顔が飛沫にまみれていく...ように見える。コロナの終息後、この気持ちは果たしてリセットされるのだろうか。
 札幌到着後も空港で〆のうどんを食べた。閑散としたフロアーで一人食べるうどん。白い麺がきらきら光り、清潔感にあふれていた。

◎プロフィール

健康診断を控え憂鬱な日々。こういうストレスが一番健康に悪いと思う。

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