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エッセイSP(スペシャル)

正社員か否か

冴木 あさみ

2020年11月 2日

 二十代で一度転職をして、大手出版会社に勤めた時期がある。ちょうどバブル期の扉が開く頃。その会社も驚くべき成長の真っただ中で、数倍の広さの新社屋に移転したり、豪華な社員旅行が行われたりと、今では考えられない大盤振る舞い。私は中途採用で、正社員とパートの間、今でいうなら期限の定めのない契約社員だろう。
 大学新卒採用される正社員は優秀な人材ばかりだったが、それに負けず中途採用者も優れた人が多く、私以外は偏差値の高い国立大学や都内有名私立大学卒の女性が多かった。希望があれば正社員への登用も積極的に行う会社だったが、既婚女性達にはその席を目指すものはいなかった。
 頭の切れる非正規社員がうじゃうじゃいる職場で、正社員が優位に立つためには戦術も必要だ。職種によって様々あると思うが、その中でも情報は欠かせないものに違いない。
 独身で自由で酒に強いという理由からか、上司や正社員の飲み会にはよく誘っていただいた。彼らにとって三流大学卒の私は競争相手にもならず、よって警戒心も薄くなる。そこで交わされる情報交換は仕事上有益でありながら、正社員以外には簡単に教えたくないものである。秘密の共有で仲間意識が強くなり、自分たちがこの職場をけん引しているという使命感も高まるのは当然の流れだ。より長く職場に滞在し、会議に出席し、上司との交流を図ることで得られる情報量の差は、そのまま正社員と非正規の格差になって表れていた。
 武装して立身出世を目指す者もいれば、仕事がしたいけれど、家庭も大事。大きな責任も、泊りの出張も残業も休日出勤もお断りという人もいて働き方は人様々だ。うまく折り合えばいいのだが、そうそう自分の思い通りにはいかない。
 今の日本経済社会を支える重要な柱となっている非正規社員。賞与も退職金も無いのは不当と訴え敗訴した先般の裁判は、メディアで大きく取り上げられた。SNSでも多数の意見が寄せられていたが、興味深かったのは、同じ弱い立場の人から「そういう条件の雇用契約に同意したのだから、後で会社を訴えるのはおかしい」というコメントが多かったことだ。
 「正社員と同じ仕事をしているのに」と訴えた側の忸怩たる思いは痛いほどわかる。一方席を並べていた正社員側の考えはどうなのか、聞いてみたいところだ。見えない意識の差を評価するのは実に難しい。一度弱者となった者が希望を見いだせない社会システムなんて。変えていこう!君たち若者が。

◎プロフィール

さえき あさみ
日本人は既に集団免疫を獲得していて、十一月にはコロナは消え去ると言った学者がいる。今月が楽しみ。

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