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エッセイSP(スペシャル)

過ぎてから

吉田 政勝

2020年10月26日

 過ぎてから気づくことがある。
 人間は不完全な生きものなのか、私のできが悪いのか。悪気がないからこそ、油断してへまをやってしまう。
 10月10日だった。
 ラジオ体操の最後の朝、図書館前へ取材に向った。主催するラジオ体操同好会から「小学6年生のH少年に皆勤賞が授与されるので、取材にきていただけませんか」と事務局より連絡を受けていたからだった。H君は小学1年から3年まで夏休みの朝の体操に通っていたが、4年から6年までは夏休み以外も通うようになった。
 一年前にもH君を取材していた。彼が5月から10月10日まで体操に出てきていたので「がんばったで賞」が贈られたのだ。その時は授与式が終わってH少年を撮影して、感想のコメントを聞いた。
 10日の皆勤賞の授与式後、同好会の会長のコメントを聞いて、H君を撮影するつもりが、辺りを見回すと主役の少年がいない。残っている大人に、
「H君は帰りましたか?」と聞いた。
すると「さっき、帰ってゆきましたよ」と言われた。
 H君の自宅は近くだったので、私は追いかけた。自宅に着いて、インターホンを押した。父親が顔を出した。
「H君の写真を撮ります。その前にこれ私からのプレゼント」と言って小さなブロンズ像をH君に渡した。伊東市の書店社長から贈られた宝物だった。彼の努力をたたえるために用意した。
「わあ、すごい」と言って彼は喜んだ。自宅前でH君を撮ったが、やはり背景が朝の体操のふんいきではない。
「図書館前に戻って撮ろうか」と誘った。彼に歩きながら皆勤賞の感想を聞いた。背景に図書館の建物を小さく入れて何枚か撮っていた。すると、H君の母親が自転車で来たのでコメントを聞いた。母親が笑顔で話した。撮った写真のできばえに安堵したが、母親が追いかけてきた意味を考えてみた。
 自宅前で撮影していたわが子が消えたので誘拐されたのではないかと心配になったのではないか。私は保護者に何も言わずに連れ出したことを反省し、母親の不安を想像して悔恨の思いに襲われた。

◎プロフィール

商業デザイン、コピーライター、派遣業務などを遍歴。趣味は読書と映画鑑賞、時々初心者料理も。

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