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エッセイSP(スペシャル)

青春の断章

吉田 政勝

2020年6月29日

 今年は2月頃からコロナ感染対策で外出を自粛していた。自宅で過ごす時間が増えたが、とくに不自由でもない。もともと、私は独りで部屋の中で何かに没頭するひきこもり派だ。青春の日々もそうだった。
 札幌に出たのは18歳の頃で、デザインの夜学で学ぶためだった。私は自作のデザインを持参して、N社に面接にゆき採用された。社員は15人ほど、無償の寮があった。すでに2人が入寮していた。職場から夜学に通い、寮に戻るのは夜の10時過ぎだった。彼らは仕事を終えると自由な時間で出かけていることがあった。私は部屋の隅の机で課題制作に没頭した。寮の仲間と遊ぶことが少なくなっていた。
 ある日、職場で机だけ借りているフリーのM先輩から「喫茶クルミに来い」と誘われた。店が貸し切りで彼の友だちや若い女性も来るということだった。つきあいが悪い、人と話すことも大切だ、とMさんに諭された。断りきれず参加した。その中に女性のSさんがいて、私とつきあいたい、とMさんを介して伝えてきた。Sさんは役所勤めで、まじめな好印象を受けた。
 その頃、私は米国のデザインの通信教育も受講していた。受講料が給料の3分の1で、生活のやりくりに苦心した。時計を質屋に入れて2千円を手にした事もあった。デートするための時間がなく金もない状態だった。M先輩に「給料が上がるならば転職したい」と漏らした。やがて業界の伝手で某出版社を紹介してくれた。面接し、採用された。
 Sさんとはデートした記憶がない。連絡もしないで冷たい男と思われたに違いない。相手の目をみて自分の状況を説明すべきだったと今なら思う。胸のうちを話して交際が無理なら別れも仕方がないと受け止めたはず。貧しい家庭で親の援助は無理だった。自立するのが何より優先で、道筋が定まらず夢から外れるのを恐れた。
 転職して収入が増えた。背広を新調し、レコードプレイヤーを買い「夢のカリフォルニア」を聴いていた。
 その後、ラジオからその歌が流れるたびにほろ苦い青春を思い出した。
 そして20年後にそのカリフォルニアに旅をすることができた。

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
商業デザイン、コピーライター、派遣業務などを遍歴。趣味は読書と映画鑑賞、時々初心者料理も。

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