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エッセイSP(スペシャル)

呼び名・・

たかやまじゅん

2019年12月16日

 人前で話す機会に恵まれた。その時の呼び名は、本誌の綴りやラジオと同じ名乗りを遣っている。
 幼い時は名前にちゃんで呼ばれ、学校では苗字とクン。社会人になった昭和40年代、会社にはまだ家族的な雰囲気が漂い、呼び名も姓名の頭文字から「〇さん」や「〇ちゃん」などで、親近感があった。
 11月中旬、かつて所属した二つ目の事業所の集まりが東京で催された。私が遠方ゆえ、雪のない季節を選んでくれる。その日、北海道の雪模様がテレビのニュースで流されると「〝マッちゃん〟来れるのか・・!?」との電話やメールが入った。この名を呼ばれると、瞬時に勤めていた頃が甦ってくる。幸い前日に上京していたので、直ぐにその旨を伝えた。
 当日は、秋晴れの中を会場に向かうと懐かしい顔ぶれが揃っていた。「マッちゃん、久しぶり・・」と差し出す手と手から温もりが伝わってくる。同じ時代を過ごした仲間たちであり、当時の上司の笑顔に接するとホッとして来るのを覚えた。各々が近況を報告し合い「来年も〝元気〟で、また会おう!」と約束して、東京を後にする。
 久々に乗る新幹線のぞみは、アッという間に故郷の小田原駅を通過。やがて雲間から頭を白くした富士山が顔を覗かせ、たそがれ時の名古屋駅に停車した。8年近く住んだこの街には知己も多く、それぞれの顔を思い浮かべつつ、30数分後にはライトアップされた京都タワーの出迎えを受けた。
 きぬかけの路や嵐山を往くと所々に彩りを魅せている。桜を愛でようとした春は寒さで開花が遅れ、紅葉狩りに訪れた秋は暖かさから先送りのようで、季節の移ろいは人智で計り知れない。嵐山に開館したばかりの『福田美術館』で日本絵画に触れる。カフェテラスの池を挟み、桂川に掛る渡月橋の眺めは絶景のパノラマだが、土手道を行き交うのは国際色豊かな観光客・・。
 さらに大阪へと足を延ばし、新歌舞伎座で舟木一夫さんの公演を観る。終演後は、旧知の人たちとの語らいと新たな出逢い。この集りでは、私の本名を呼ばれたことがない。なぜなら、エッセイやラジオを見聞きしている人も多く、その名前が知られている。
 さて、今年の講演は新たに二つ加わった。登壇して主催者に紹介される際、「講師の先生は・・」と呼ばれた途端、お尻がモゾモゾして、腰が浮いてしまうのだった。

◎プロフィール

〈このごろ〉久々に弟が来札して夜の街に繰り出す。カラオケは自信を持っていたが、調子が出ない。仕事柄、今も場数を踏む彼には敵わなかった。

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