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エッセイSP(スペシャル)

ホッコリ・・

たかやまじゅん

2019年6月17日

 春先から家の周りで2羽のスズメが飛び交う。口ばしに何かを咥え、向かいの家で使っていない換気口に頻繁と出入りをしていた。そこを見上げると藁くずのようなものが隙間に見える。巣作りのようだ。やがて私の部屋の窓から、陽ざしの中にチュチュと聞こえてきた。
 スズメは軒下など人の手が届かないところに巣を作り、カラスやネコから〝巣を護る〟と何かで読んだ。家人が玄関に並べた花のプランター脇に、水を入れたトレイを置いた。数日後、スズメが舞い降りてきたと言う。私も玄関を開けるとき目に留まった。
 ある日、電線に止まったスズメがピーピー鳴いている。何事かと思えば、家の側で1羽のカラスがウロウロしているのだった。さらに鳴き声がけたたましくなり、巣から少し離れた所を飛び回る。まるでカラスを牽制しているかのようだ。暫くしてカラスが姿を消すと、交互に巣の中へ吸い込まれて行く。きっと餌を運んでいたに違いない。
 だが、カラスも繁殖期には巣の周辺を歩く人間を襲う。以前に道庁前の街路樹で、後ろからバサッと頭を叩かれた。カラスも子を護ろうと必死なのだろう。テレビのドキュメンタリー番組でペンギンの生態を観た。海から3キロの登り坂を子供に餌を運ぶそうな。鳥に限らず子育ては動物の遺伝子に備わったもので、ヒトであればなお更のことだ。
 上京して定宿のホテルはスーパー銭湯が併設され、白いタオルの宿泊客と黄色のタオルの一般客で常に混み合う。露天風呂の炭酸泉に浸かっていると親子連れがきた。3歳位の男の子が、私の脇から吹き出す泡を指さすので変わることにした。その時、父親が「すいません」と頭を下げる。暫くして「ありがとうございました」と笑顔で上がって行った。お湯の中で私はこころまでホッコリとしてくる。
 豊洲市場を見ようと有明駅から新交通システム『ゆりかもめ』で、眺めのいい窓側に座った。途中から親子連れが乗り、小学生らしい女の子が「外を見たい」と言うのを耳にして席を変わる。この時も母親は「ありがとうございます」と頭を下げ、私が降りる際には笑顔で送ってくれた。偶々若い親たちに触れ、世の中捨てたものではないと嬉しくなった。
 さて、向いのスズメは夕暮れまでチュンチュンと元気な様子で、やがて夜のしじまが訪れ、翌朝また〝さえずり〟を耳にして一日が始まる。

◎プロフィール

〈このごろ〉市営交通の敬老パスが届く。医療費の負担が2割になる。運転免許証の更新は高齢者講習だった。思えばよくKOKIまで来れた・・

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