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エッセイSP(スペシャル)

ヒタル・・

たかやまじゅん

2018年12月17日

 初めて観た映画や芝居は忘れ難く、何所で誰と見たのか子供ごころに焼き付いた。
 父に連れられたターザンとギャング映画は、故郷小田原の富貴座(昭和32年に火災で焼失)で、御幸座(後に映画館)は祖母にお供しての旅芝居だった。花道を備えた芝居小屋であり、客席からおひねりが飛び交い新聞紙で包んだネギやダイコンが舞台の袖に届けられた光景が甦る。
 社会人となり上京して有楽座やテアトル東京など大きな映画館を巡り、昭和44年には、国立劇場での「南総里見八犬伝」が初歌舞伎となった。こうして赴いた先々で数多の鑑賞に浸る私にとって、〝映画と映画館〟〝芝居と劇場〟は常にセットなのだ。いまも芝居は劇場で上演されているが、映画がシネコン上映に変わり、何番のスクリーンで観たのかを思い出すには、いささか心もとない。
 劇場の新築開場を「杮落とし」と呼ぶ。杮(こけら)とは削った木片や鉋(かんな)の木屑のことで、木造の芝居小屋が落成を迎え、屋根に遺る木片を払い落す杮落としが転じ、新開場での初興行を指すそうな。
 今年4月、3年の歳月を掛けて新築された名古屋御園座が開場され、二代目松本白鸚(はくおう)さんと十代目松本幸四郎さんの高麗屋襲名興行に足を運んだ。襲名と杮落としの二つを祝う華やかな口上に浸り、名古屋にいた頃に通った春と秋の舞台に思いを馳せる。続いて7月に行った舟木一夫さんの御園座での特別公演は、30公演のうち19公演が貸切りで、さすが〝芸どころ名古屋〟を思わせる賑わいを魅せた。
 京都南座は、3年近くに及ぶ耐震補強工事がなされ、11月に新開場記念として八代目市川染五郎くんも参加した吉例顔見世興行に駆け付けた。やはり新しい劇場と三代同時襲名で、客席には京都の綺麗どころの姿も少なくない。因みに南座の建物は、国の登録有形文化財に指定されている。
 そして札幌では、2015年に着工した札幌文化芸術劇場が完成し〝hitaru〟と名付けられ、11月中旬には5年ぶりとなる舟木一夫さんオンリーワンのステージが、2日間満席の中で催された。
 幕が上がり年齢を感じさせない歌声が館内に流れ、次々と披露される歌の数々は、55年の歳月をフラッシュバックさせながら今を醸し出し、身も心も新たな気持ちに浸ってくるのが心地よい。その舟木さんを私が初めて見たのは、昭和41年の小田原市民会館であった。

◎プロフィール

〈このごろ〉紅葉の彩りが、いま一つのように感じたのは私だけだろうか。遅い初雪が積もり凍結・・いつもと何かが違っているようだ。

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