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エッセイSP(スペシャル)

咲けない人

冴木 あさみ

2018年7月 2日

 私の職場は就労系福祉事業所だ。一般就労が難しい障害者に働く場を提供している。身体・知的・精神の三障害に加え、難病患者も利用者として通所している。主な仕事は縫製作業。長年縫製関連の仕事に携わっていた人はいるが、入所時ほとんどは未経験者。ミシンは未経験だった人も、毎日の鍛錬により今や定番商品の受注対応にてんてこ舞いの人もいる。
 設立四年目の今春、大きな仕事が舞い込んだ。詳細は省くが、ある事業の記念品二千個の製作の依頼だった。うちの事業所だけでは難しい数なので、同業福祉施設五社が共同で作業することになった。福祉関係の代理店から製作の話を受けた時は、厳しさが増す福祉の分野にあってまさに一筋の光明だった。
 おおまかな段取りができ、代理店の担当者が五つの事業所を集めて商品の確認が行われた。…ところまではなんとかスムーズにいっていた気がする。
 代理店の担当者は転職してきたばかりの中年の男性。縫製のいろはを知らずとも、商品の把握は当然のはずだが、話の合間に「僕は縫い物は分からなくて…」が決まり文句で。そのうちスケジュールの管理も曖昧であることが判明。すべてにおいて後手に回る。
 五か所が同一商品を製作するためには、認識のずれは少しも許されない。なのに「各事業所間で連絡取り合って」と言われ、行ったり来たり、電話では言った言わない、変更になった、知らされてないと混乱状態に。確認したはずなのに進めていくうち話が変わる。我々も無駄な骨折りにやる気も失せた時期もあった。
 何しろ、作業は図面もなく開始された。下請けの立場でも強気で再三の請求をする。代理店の彼が持ってきた「仕様書」という名の紙は簡単すぎて、さっぱり役に立たない。しかもホチキス留めの二枚目がさかさまに印刷されている。
 彼はついに図面を用意することが出来なかった。依頼主に提出すべき工程表も作成できなかった。検品、包装、添付カードの作成、梱包資材と、作業が最終段階に入ろうとしている今、進めているのは我が事業所の代表理事と代理店の所長の二人。担当者はどこに?
 仕事には向き不向きがある。適した場所でしか花が咲かないように、人の能力も開花できる場所というものがある。勿論人間には適応能力という力が備わっている。社会人にシフトする際、誰もが一発で自分の適職に就けるとは限らないのだから、ひょっとしたら努力だけで頑張り通す方が大多数かもしれない。忍耐・努力・根性。日本人が好きな美徳スピリットを駆使しても咲けない花はどうしたらいいのだろう。ずさんな仕事をする彼に、今や厳しい意見ひとつ言えない自分がいる。

◎プロフィール

旬のアスパラ食べ放題のツアーに行った。そう食べられるものではない事を知る。さくらんぼ食べ放題でリベンジを目指す。

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