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エッセイSP(スペシャル)

ここは・・

たかやまじゅん

2018年5月21日

 眼科で、「白内障手術後の1週間は保護メガネが必要です」と奨められたアイケアグラスが、紫外線や花粉症対策になることから、外出の時も手放せなくなった。 
 カラフルな色も掛けたくなり、メガネショップで訊くが取扱いはなく、地下街のドラックストアを覗いてみた。店内は観光客のグループで立て込み、手の空いている店員が見当たらないので、地上の店を三軒ほど回るが、どこも混雑していて聞くに聞けない。
 最後に寄った店で、ようやく店員を見つけたが、返ってくる日本語がたどたどしくて、会話が通じなかった。ここは夜になると煌々と照明が点り、大きな袋を抱えた人たちが群れを成すアーケード街なので、海外の団体客を当て込んだ商いのように思えてしまう。
 探しても無いとなると、なお更に欲しくなるのもひとの人情。ケースに記載されたメーカー名の〝エリカオプチカル〟をネットで調べると坂井市で、国産めがねの産地として有名な福井県にあった。問い合わせるとオンラインショップで購入出来ると教えられ、丸岡町からの発送と聞いて、4年前に訪れた桜に包まれる丸岡城を思い起こす。
 今年は暖かい日が続き、全国的にも平年より1週間ほど早い桜の開花となる。満開を期待して訪れた京都は、祇園のしだれ桜も御室の桜も、名残の桜であった。嵐電と路線バスが走り、アクセスのよい京都市北西部は、名刹や神社が集まる観光エリアの「きぬかけの路」として知られ、50年ぶりに眺める龍安寺の石庭は、砂の白さと石の黒さが際立って観える。
 治ったばかりの眼で、ぜひ見たいと願っていたもうひとつが金閣寺だ。中学校の修学旅行で、前後を歩いていたのは、首からカメラを下げた学生服姿ばかりだったのに、私がこの日耳にするのは、英語とフランス語にイタリア語・・。
 「逆さ金閣」が映る鏡湖池は人気スポットで、池の辺には自撮り棒がそこかしこで掲げられ、隙間から背伸びをする。風が強く、ほこりの舞う人込みの中では、アイケアグラスが役に立った。境内をひと巡りするうちに日が傾きかける。そのとき、光を浴びた楼閣が少しずつ鮮やかな金色に染まって行くのを、私の両眼はハッキリと捉えていた。
 先ほどまでザワついていた周りからは、静かな雰囲気が漂い始めてくる。きっとここは、美しい〝ニッポン〟の風景が、国籍を超えて感じられるところなのだ。

◎プロフィール

〈このごろ〉デパートの店頭に好物の谷中生姜(葉ショウガ)が並び始めた。生味噌を付けて食べるのが、初夏の楽しみとなっている。

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