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エッセイSP(スペシャル)

満ちた・・・

たかやまじゅん

2016年11月21日

 大徳寺の塔頭の一つで創建450年を迎えた聚光院は、安土桃山時代の絵師、狩野永徳とその父、松栄による国宝の障壁画が京都国立博物館から里帰りして、9年振りに公開されている。見学は時間帯毎に15名の限定であり、予約をネットで申し込む。
 10月初め、9時の開門前に並ぶと中から出て来られたのが、裏千家の千玄室さん(15代千宗室宗匠)であった。ここは千利休が菩提寺と定めた三千家(表・裏・武者小路)歴代の寺であり、「おはようございます」と挨拶すると「ゆっくりご覧下さい」と微笑まれる。90歳を過ぎた筈だがかくしゃくとされ、宗匠のように歳を重ねられたらと思う。
 方丈の前庭は利休作と伝わり、千家所縁の茶室もありそこかしこが重要文化財に指定されていた。襖に描かれた四季が本堂いっぱいに拡がり、係員から40分ほどの解説を聞くうち、足下から歴史の重みが伝わってくる。だが、何と言っても昨今の観光地のように声高なグループに煩わされないのがいい。
 そして3年前に落慶された書院の襖絵には、静寂さを醸し出す青を背景に滝の白糸が部屋の隅々までに描かれ、あたかも流れ落ちる滝の音が聞こえてくるようで、千住博画伯の業に目を瞠った。後日、昨年から交流のある千葉の金谷美術館で開催中の「世界を奔る!千住博展」図録を取り寄せてしまう。
 今出川の相国寺は、伊藤若冲の「動植綵絵」30幅を展示中・・と言っても美術印刷用のコロタイプ印刷である。本物は5月に東京都美術館の大混雑の中で観た。複製でも6年費やした原寸大で、雨の所為か人も少なく静かに鑑賞できた。この相国寺承天閣美術館は、所蔵する若冲の釈迦三尊像3幅と動植綵絵と合わせた33幅を飾るために設計されたと有馬頼底(らいてい)管長が、何かで語られている。
 方丈の階(きざはし)に高位しか履かない赤い出頭靴で、ゆっくり歩まれる老僧を見掛けた。確か管長さんは80歳を超えていたような。私は知らず知らずのうち境内に佇む。時雨が傘を濡らす。その方がこちらを見る。有馬管長さんだ!その瞬間、背筋を伸ばし頭を下げていた。すると合掌され深々と返礼される。やがて私のこころに、えも言われぬ温かな気が満ち満ちた。

◎プロフィール

〈このごろ〉季節の彩りを紅葉と雪が取り合った。この冬は長そうだ。もうすぐ申と酉がバトンタッチ・・暦ってこんなに小走りだったかしらん。

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