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エッセイSP(スペシャル)

リオへの祈り

冴木 あさみ

2016年8月 1日

 組織的なドーピング関与が明らかになったロシア。リオデジャネイロオリンピックへの道を閉ざされた選手たち。この地の国家ぐるみのドーピング疑惑の歴史は長く、オリンピックの開催ごとに取りざたされてきたような気がする。周囲の関係者が選手の食事やドリンクに薬物を添加し、本人の知らないところで薬漬けにされていたという話を子供のころ耳にした。嘘かまことか私なぞ知る由もないが、優秀なスポーツ選手を大量排出するには国家戦略なしに実現するのは難しいだろう。メダリストの生涯の生活が保障されるのであれば、メダルの価値は大きく変わってくる。広大で神秘的な土地と荘厳な歴史的建築物、ロシア文学に心を奪われる時期もあったが、子供の時にインプットされた怖いというイメージは未だに私の心から消えはしない。
 今年、日本でも人気の高い美人テニスプレーヤーが薬物検査でひっかかり本人の会見が行われた。十代のころから医師の管理のもと常用してきた鎮痛剤で、規定が変わったことに気付かずうっかり使用し続けた…云々の弁明だった。本人及び選手を支えるチームのミスで済まされる話なのか。残念ながらお粗末な話という印象しか残らなかった。二年間の資格停止処分を受けたが、彼女はこれを不服としている。
 それにしても薬物投与で人間をどれだけ改造できるものなのか。厳格なチェックの下、一向に薬物不正使用が根絶されないのだから、そういった興味も不謹慎ながら湧いてくる。どんな薬物をどれだけ使ってもいいから記録のみ重視という「薬物投与者限定大会」なる枠を設けたら、果たしてどんな記録が生まれるのか。ドラえもんのアイテムを使えるわけでもなく、物理的限界があるので瞬間移動なんてありえないし、五階建てビルを持ち上げることも不可能だ。コンマ数秒の記録に挑むアスリートは生身の人体の限界への挑戦だから人を感動させるものではなかろうか。
 オリンピックの意義はどこにあるのか。サッカーはW杯。テニスはウインブルドンなどの四大大会。世界陸上。それぞれに権威のある大会があるのに、なぜオリンピックなのか。「一八九八年、世界の平和と青少年の健全な教育を目標に揚げた人類の祭典」を掲げアテネを皮切りに始まった。百年以上たった今、世界の平和も健全な教育も保障されないままだ。それどころか今回のドーピングの件で政治問題にまで発展し不穏な空気さえ漂う。準備の遅れや感染症、治安の面で問題山積のリオオリンピック。期待は「ただただ、無事に終了してほしい」という後ろ向きの願いに変わってしまった。

◎プロフィール

さえき あさみ
若手音楽家のPMF開催中の札幌は音楽に包まれている。地下歩行空間でフルートによる演奏を聴いた。「虹と雪のバラード」に目頭が熱くなる。

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