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エッセイSP(スペシャル)

風吹き荒れる

梅津 邦博

2016年7月11日

 週末は健康のためになるべく車に乗らないようにしたい。出来るだけ歩くようにとは思っている。ところが、歩けば何事かが生きてゆくことの根幹に伝わってくる場合もある。
 たとえば「風」が、頬を、髪を、手を、煽るようにして吹く。それによってぼくは何かを意識してしまう。いろんなことを憶い出したり、あるいはこれからどう生きてゆくのかなとぼんやり考えたりもする。立派な人間として生きてきたわけでもない。起伏に富んだわけでもないだろう。いや、本当はいろいろとあったのかも知れないが、しょうもない生き方をしてきたことも事実だ。風が、
 「おまえはどんな人生を生きてきたのか」
 といわんばかりに吹き荒れているようだ。自然というものは人の心に何かを喚起させる大きな力があり、自らを省みさせられることがある。
 十勝にいてそれなりに暮らしているのに満ち足りているとは思えないところがあるのは、ワガママでもあるということにもなる。バランス的にはどうかわからないが天候は6割くらい晴れの日で、2割は曇りの日そして後の2割は雨の日があればいいのかな。雲もなく青い空が巨きく彼方へと広がり、金色の陽の光が空間で爆ぜつづけるなかでゆったりと過ごしたい。そんな暢気なこといってられないんだけど、ともかくそうするとささくれた気持ちが穏やかになってゆく。しかし、もうそういう自然世界は、だんだんと失われてゆくような気配がしてならない。例えばいつの頃からか、とにかく風が強く吹く日が多くなってきてはいないか。
 生業で乗用車を運転しながら士幌町の畑作地帯を走っていた。農業者のお客さんのところで仕事を済ませて出てきた。強風が西から東へと一直線にビューッと吹き抜けている。種蒔きをすでに終えた5月下旬である。単なる強風なのだろうか。本来は大方、天候は安定しているような時期ではないのかな。広大な畑地の表面の土が巻き上げられて空間が土色に染まって霞んでいた。道路脇に車を停め、しばしその光景を見ていた。少し鼻腔が乾いて埃っぽい。車がグラグラと揺れて「不気味」な感じがしてならない。
 6月。久し振りに所用で東京へ行ってきた。日本橋、神田、新宿など、電車に乗っている以外はとにかく歩いている。あちこちとビル街を歩いているのにそのなかで強風が吹いていることにびっくりしていた。髪や薄手のブルゾンがバサバサと煽られていた。いったいどういうことかと思った。 「風水雪火などは世の不浄さを吹き祓うミソギハライの役目である」とされている。気持ちの底に暗澹たるものが少しただよっていた。やはり自然界の気というようなものが狂いはじめ、異常気象の世を迎えているのだ。
 人間は自然の影響を受けやすいものだ。ぼく自身、仕事をする。人と会う。街を歩く。食事をする。車を運転する。文章を書く。とにかく何をするのでも影響を受けているのだった。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。
著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)
銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)

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