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エッセイSP(スペシャル)

円山動物園の悲劇

冴木 あさみ

2015年9月 7日

 「ネットで見たけど、かなり衝撃的で気分が悪くなった」
 札幌市円山動物園のメスのマレーグマ、ウッチーがオスのウメキチに暴行を受けた翌日死亡した悲劇の話だ。職場の休憩時間話題に上り、一人がそう言って顔を歪めた。帰宅後私も検索してみたが、見るに堪えない映像で十秒も見ることはできなかった。
 目撃者によって撮影された映像が瞬時に世界中に流れる時代である。この惨事は偶発的な出来事ではない。動物園関係者によって設定された状況の中で、しかも複数回繰り返された暴行であった。これは事故でなく事件といえるだろう。人々の動物園に対する強い不信感は、秋元市長が謝罪会見をするという異例の事態となった。
 ウッチーの死をきっかけに、円山動物園においてここ数年動物の死亡が続いていることが明らかになった。批判の声が高まり、動物園が飼育改善勧告を受けて二日後のことだった。今度はグラントシマウマが十月オープン予定の新施設アフリカゾーンに輸送中死亡した。シマウマは神経質な動物で輸送時のストレスを起因とした肺水腫が死亡原因との発表がなされた。移動中は獣医師も三人付き添い万全の体制をとっていたそうだが、四百メートルという距離を無事移動させることができなかった。くしくもこの原稿を書いている最中今度はキリンの死が伝えられた。
 意志疎通のできない動物を相手にする仕事の難しさは誰もが理解していることだろう。それでも動物の専門家である獣医師や長年経験を積んだ飼育員、専門家等が一丸となった協力体制で運営しているはずと市民は信じて動物たちの命を預けているのだと思う。そうでなければ地域の動物園は存続できるはずはない。
 動物園を楽しみに訪れるのは子供達だけではない。大人もまた動物の姿に癒されている。親になった人が幼い頃親に連れて来てもらった場所に、今度は自分の子供を連れてくる。日常に忙殺された過去を思い出す時、改めて親子の絆を知り、家族の歴史を感じ、それはまた自分の子供たちへと受け継がれていく。動物園の存在意義は動物の鑑賞に留まらず、そういう特別な場所は他に多くは存在しないと思う。
 今年動物園に行きましたか?ここ数年間で何度動物園を訪れましたか?批判や攻撃は誰でもいつでも出来る。早急な飼育改善を求めることはもちろん、動物園はどうあるべきか、適正な飼育、運営とはどういうものなのか、何故動物園が必要なのか、市民も関心を持ち続けることが求められている気がする。

◎プロフィール

さえき あさみ
札幌市在住。福祉事業所勤務。
今年は地面を蹴って羽ばたく年に。
就寝前の読書は最近暫く敬遠していたフィクションの世界に浸っている。

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