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エッセイSP(スペシャル)

勤め先を辞めるな

梅津 邦博

2015年7月13日

 社会において「何事かについてそれはおかしいことだ」などと言ったら、「今はそういう時代だから」という言い方がある。あきらかに歪んでいるのに、仕方がないとでも思っているかのようなふしに納得がいかないのだが。時代を生きている人間の質というものはいつの世もよくないのだろうか、それとも昔はよくて後世へ行くほど軽薄になっていくのだろうか。
 簡単に勤め先を辞める者が多い。入社したと思ったらいつの間にか辞めてゆく。会社側では経費をかけて新人を採用し、手間暇かけて仕事を教え、出来るようになったと思ったら「辞めます」と言われてしまうのだ。
 客の側としても馴染みの店というものだってある。靴店、GSスタンド、飲食店、ショッピングストアほかいろいろとあるが、ちょっとは気心の知れたスタッフがいるとわりと行きやすく安心もあるのではないか。そこでようやく慣れてきたと思ったら、ある日、辞めたということがわかって物足りなさを覚えるのだ。スタッフが辞めるのが多い職場だと、その会社や店に対しての信用度もトーンダウンしてしまう。そうなるとどこか行きにくい気分もあるだろう。
 「石の上に3年」という言い方もあるが、とにかく一生懸命に仕事をした方がいいと思う。そうすることで少しは仕事というものが、人が、社会が、分かりはじめる。どんな仕事であれ、公序良俗に反していない限りは、その人にとってとりあえずは天職ではないだろうか。
 ひとつ処で働きつづけるということには、単調であっても深い意味があるのだ。カネや遊びなどのことがあっても、人生にはもっと大事なことがあるだろう。それが出来ないとなれば想像力も考える力も弱いとしかいいようがないのではないか。
 さる衣料品店に勤めていたある青年が退職し、隣町のショッピングセンターに勤めたらしい。元気でやっているのかなと思っていたら、風のうわさで最近やめたと聞いた。理由は、「客からのクレームが多いことにバカらしくなったから」だそうだ。
 しっかりした人間であれば少しは真摯に考えながら何とか対応してゆくというような方向へでも進むのではと思えるのだが、そうではない。「バカらしくなったからやめる」というのは、なんという恐るべき非生産性で退廃的であることか。
 世の中、人と関わって仕事をするということは前向きに努力しつつ発展しながら上昇してゆこうとすることが必要なのだと思う。そこには、姿、力、夢、などが見え隠れしているはずなのだ。不確実性の世だからこそなおのこと繰り返しながら少しでも正しい方向へと向かってゆく方が後に大きな力になってゆくのではないだろうか。
 もし出来ないとなれば、社会が成立しなくなり、つまるところ自らの存在さえおぼつかないということを意味するのだ。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。
著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)
銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)
喜久屋書店/ザ・本屋さんにて発売中です。

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