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エッセイSP(スペシャル)

金縛り

冴木 あさみ

2014年12月 1日

 深夜金縛りにあった。時計を見るとジャスト2時。
 五十数年の人生で初めての経験だった。金縛りにあう人は繰り返し体験するという話を聞いたことがある。身近にそういう人も何人かいたが、その類の話は苦手だ。昼間でも聞きたくはない。耳を塞いで会話には入らない。
 寝る前軽い本を読むのが習慣になっている。推理小説は途中で止めるタイミングがつかめないし、理屈っぽいものは電気を消した後もあれこれ頭を使ってしまう。簡単にころっと入眠するためには脳をリラックスさせる軽い読み物が適当だ。金縛りにあった丁度その頃、寺の住職のエッセイ漫画を読んでいた。寺の日常を面白おかしく紹介している漫画で仏教の話に興味があり読み始めた。でもそれが恐怖体験を招いたような気がして寝室から撤去した。
 金縛りは科学的説明によればレム睡眠状態に起こる現象の一つという。現在は広く知られているが、睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠が交互に繰り返されている。レム睡眠は浅い眠りで、身体は深く眠りについているが脳が活発に動いている状態。疲れた体を休ませ筋肉の修復をしている一方、脳の方では記憶を固定するという大事な仕事をせっせとしている。夢を見るのもこの時間だ。その逆がノンレム睡眠で心拍数が減り血圧も下がり脳が休む時間だ。レム睡眠の時つい目覚めてしまうと意識があるのに身体が動かないという不思議な現象を味わうことになるのだ。たとえ科学的に説明がついたとしても歓迎できない体験だ。
 金縛りにあったらさぞ怖いだろうな。目も開けられず恐怖でますます身体が硬くなり、解けたら即布団にもぐりこんで震えるだろうと想像していた。仰向け状態の私の両肩をゆっくりと上から押し付けられる感じがした。誰かが上に覆いかぶさっている。そう感じた。すぐさま目も開けられない。しかし、その状態で私の口から出た言葉に自分でも驚いた。
 「ちょっと!誰?止めてよ、大切な睡眠を邪魔するなんて!」
 実際その声は半分夢の中の心の声だった。プチ切れしている自分に気付いて徐々に覚醒し、しっかりと両目を開けてキッと薄暗い空を見つめた。
 決して勝気ではないと思っている。子供の時から自分に自信がない分「真面目に誠実に自分に厳しく他人に寛容にそして謙虚に」と生きてきたはず。寝返りをうって布団にもぐりこんだ後、自分の客観的分析にしばし時間を費やした。年と共に性格も変化してきた?自分を見失うという状態が現実的に最も怖いことかもしれない。

◎プロフィール

さえき あさみ
札幌市在住。福祉施設勤務。
写経・手話の勉強・南の島への旅行が今年一年の計。

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