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エッセイSP(スペシャル)

ビジター席で

吉田 政勝

2014年10月27日

 10月1日に「日ハム・楽天」の試合を観に行った。札幌ドームは、ほぼ満員だった。だが、私は日ハムファンでありながら楽天の応援席に座った。実は話はこうだ。
 日ハムの最終試合を観たくなった。それで、ドーム観戦の企画をした会社に電話で申し込むと「外野席がある」との返事だった。翌日、その会社の事務所を訪れると「割り当ての席がなく、残されているのはビジター席くらいです」との返事に驚いた。
 ほかを探してみるかな、と思いつつ、ビジター席でもいいか、とあきらめた。(ふつうの客なら約束ちがうと怒るだろうが、私はすぐに頭を切り替えるタイプ) 
 その後、金子誠選手の引退表明があり、1日がその引退式だという。なんと幸運なことだと思って感激した。でも、ビジター席だ、と念頭に浮かぶ。
 当日、バスでドームに着くと、まず弁当を買って、テーブルで広げて食べた。私は日ハム6番のユニフォームのTシャツをジャンバーで覆い隠して、南ゲート116通路へむかった。32列31番。まさにここは楽天の応援席だ。
 日ハム打線が次々とヒットを重ね点数が入っても私はビジター席で、喜びを表現できない。「これって隠れキリシタン?」「価値観のちがう相手に合わせる気分に似ている」と思った。
 そして、楽天の監督は星野さんだ。元監督は尊敬する野村氏だ。2監督は元阪神の監督だ。自分は日ハムの前は阪神ファンだった。阪神選手だった新庄や坪井が日ハムに移籍して彼らの応援を始めたのが、日ハム信者になる動機だった。
 5回表で、私はビジター席を離れた。覆い隠していた日ハムのTシャツを堂々と見せた。楽天に義理を果たした、そう胸に刻んだ。席をなくした漂流者のごとく、ショップを覗いたり、各ゲートの通路から試合を見たり、バックネット裏にある大きな画面で試合を観戦した。
 試合は日ハム8対1楽天。試合後、金子選手が場内を一周した。「カネコ、カネコ!」とドームにこだました。
 野球はおもしろい。そして、野球から大いに学ぶものがある。企業も野球組織もしょせんは人間関係だ。仲のよい職場は絆が強くなる。日ハムは稲葉に象徴されるように選手間の絆が強い。野球は球を投げて、それを打つだけの単純なスポーツではない。
 監督の戦法や相手選手の人間心理をも推理し、試合の展開を予測し、洞察力や想像力が働く。ファンは、選手のプレーで感激し、チームの勝利で歓喜する。そんな時は、喜びホルモンのドーパミンが確実に脳にふえていると思う。

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。エッセイ集「モモの贈りもの」発行。晩成社の研究家。

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