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エッセイSP(スペシャル)

とても産めない

冴木 あさみ

2014年6月 2日

 先日ある組織の名前を初めて知った。日本創成会議・人口減少問題検討分科会。国の在り方を議論する民間研究機関で、産業界や学界の有識者で構成されるとのこと。その団体が二〇四〇年全国の八九六の自治体が消滅する可能性があるとの推計を出した。子供を産む可能性のある二十歳から三十九歳の女性の人口が5割以上減る自治体を消滅可能性都市と位置付けている。全国市区町村は一八〇〇あるというから半数に近い。職が無いなどの理由で若い世代の人口の流出に歯止めがきかず、このままの推移で地方の人口が減り続ければ医療・介護保険の維持が難しくなり自治体の存続が難しくなる。早急に有効な対策をとらなければ消滅する可能性が大きいということだ。可能性の高い順のリストを見ると第4位の奥尻町を筆頭に木古内町、夕張市など北海道の地名がいくつも入っている。
 結婚し子供を産み育てる余裕すらなく自分が生きていくだけで精いっぱいの人は多い。女性が働けるように保育園を作るとか、父親にも育休を設けるとか、援助金を出すなど少子化対策として動いてはいる。現在ある支援項目は必要最低限と思えるものばかりで、子どもを産み育てるための土壌として最も重要なものが何か、国は分かっていながら目をそらしている気がしてならない。
 今の若者は自分の人生に夢を持っているのだろうか、この国の在り方に果たしてどれだけの人が希望を持っているだろうか。故郷に残りたいけれど仕事が無い、働いても給与は増えない、年金も破たんしている、あげくに将来自分が、夫が、子ども達が戦地に送られるかもしれないという状況にまで迫られている。そんな国なのだ、今の日本という国は。自分の将来に不安を抱えている者がどうして子孫を残そうと思えるだろう。
 昭和の時代はよかった。同じ世代の人と話をしている時よくこういう話になる。あのころは人情があった。みんな貧しかったがそれでも将来が輝いて見えたというのが共通の弁。戦争という辛い不幸な体験をしたけれど、混沌とした中で高度成長期の国民全体が頑張って夢を持ち努力した。そして努力した分だけのものを手に入れることができた。平和ぼけと言われようとも憲法9条を世界に誇示し、戦争には加担しないという確信を持っていた。まとまった退職金を受け取り、貯蓄があり、年金も受給し、趣味に興じ、観光地には元気な高齢者であふれている。生き延び逃げ切る世代と言われている。それなのに八十代の高齢者が自分の老後が心配でお金を使えないと言う。まさに東洋の神秘の国、日本なのである。

◎プロフィール

さえき あさみ
札幌市在住。福祉施設勤務。
写経・手話の勉強・南の島への旅行が今年一年の計。

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