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エッセイSP(スペシャル)

楽しき極寒の日々

梅津 邦博

2014年2月10日

 母上は不思議な方である。
 真冬だというのに、セーター一枚姿でちょっと外へ出たりショッピングセンターへ買い物に行ったりしている。車で移動するとはいえ、外は氷点下十度も十五度もあるのだ。駐車場から歩いて店内へ向かっているその姿に周りでは、意外なあるいは驚いたりしている表情を見せる人たちもいるのだ。
 家は古くなってはいるがなかなかな風情もある。寝る時はストーブはむろんのこと各電源などオフにしている。朝晩は厳しい寒さで、家ん中は、午前五時頃など零度くらいで氷点下の時もあるのだが。
 母上の寝具は、掛け蒲団は軽めで毛布は二枚にタオルケット一枚、といういくらなんでもちょっと寒いのではないかと思ったりする。ま、湯たんぽを使用してはいるけれども。
 これから寝ようとしているところを、
 「寒くないのか、軽めの毛布をもう一枚くらいでも出したらいいのではないか?」
 「うるさいねぇおまえは、暑いくらいだと言ってるのがわからんのかい」
 「さようか…」

 ぼくはわりと寒がりなのだ。下はタイツに厚手のジャージーを穿き、上は厚手の長袖シャツに時として薄手のトレーナーを着ている。寝具は、タオルケットに毛布が二枚に冬用掛け蒲団に夏用掛け蒲団と重ね、それに湯たんぽである。トイレだとかへ行くときは足が冷たくてならない。靴下を履くといいのだ。締まらない感があるが。

 帯広・十勝の極寒の時期は十二月下旬から二月下旬までの間である。その前後はどうってことないのだ。
 冬は気温の低下と光によって、天空が、夕暮れが、透明な美しさにあふれて凍える。空間世界はキリッとしている。そしてそれは、遙かなる自然界の天地開闢以来からの明晰さとでもいうものが感じられてくる。
 人という存在の生命体として、そんな自然と接していると命や時の流れのような思いを感じてならない。人はいつかは遠いところへと旅立ってゆき、後にいつかまたこの世に再生されてくるのだ。
 極寒の冷気が家を包んでいて、蒲団に入ると湯たんぽの温かさが自分を包んでくれるが、同時に自分もその温かさを守って眠るのだ。ううむ、あったかいな…今夜の外はマイナス二十度くらいになっているのではないか。
 朝、起床して一日がはじまる。寒い空間の中で活動してゆくそれは「逞しき生命力」である。縮こまって歩くぼくを見て、母上が言った。
 「ダラシナイねぇ…寒かったら更に何かを着なさい!」

◎プロフィール

広在住。自営業。文筆家。
著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。

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