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エッセイSP(スペシャル)

境界線

冴木 あさみ

2014年1月14日

 昨年十二月、降雪量が例年の三割しかないという記事を目にしたばかりなのに、やはり札幌の冬は雪が多い。年が明けると本格的に降り始め、いつもの札幌になってしまった。
 うちのリビングから見える斜め向かいの戸建二軒は雪かきに余念が無く、常に歩道のアスファルトが見える状態になっている。うちはマンションの3階で、リビングから時々この人達の雪かきの姿をお疲れ様という気持ちで見ている。もんもんと降りしきる中、仕事を始めることもあり(二度手間になるからもう少し後にすればいいのに)と思ったり、近くの公園までママさんダンプで雪を運ぶご主人に(やっぱり男手があると助かるなあ)と感心したり、当人には申し訳ないが結構楽しい高みの見物だ。
 正月は暇なので見物回数も増える。猛吹雪のあと突如太陽が顔を出し、この隙に買い物を…と身支度をして外に出るとまた降り始めるような気まぐれな札幌の空。夜でも時々カーテンを開けて外の様子を伺う癖がついてしまった。
 お向かいは街灯の下で夜もせっせと雪かきをしている。興味深いのが隣家との境界線をきっちり定規で計ったように雪を削ることだ。几帳面なのかそれとも隣と上手くいってないのか。隣家の人も同じように境界線くっきりと除雪をしている。アスファルトが見える完璧な除雪なので遠目でも境界がよく分かる。除雪に拘る人は確かにいる。多くは性格がそうさせるのだろうが、極端になるとお隣さんとの確執が生じることも無きにしも非ず。
 以前いい話を聞いたことがある。店の主が丁稚に店の前の掃除を言いつけた。小僧は一生懸命ほうきで掃除をしたが店主に怒られた。「自分とこの前だけ綺麗にしてどうする!」翌日小僧は向かいの店の前まで塵一つ無いように掃除をした。すると店主にまた怒鳴られた。「お向かいが汚いから掃除してやったと思われるじゃないか。失礼だ!」じゃあどうすればいいんだという話。自分の店とお向かいの店の境界線よりも少しお向かいさん側まで掃除をするのだという。お向かいの店も同じように境界線よりも少しこちら側を掃除する。すると真ん中を歩く通行人が一番きれいな場所を歩くことができるということだ。日本人の精神ここにありという話は心に残って離れない。お互い雪かきに拘る性格ならば隣家との境界線を少し越えたところまで除雪すれば気持ちがいいのに。余計なお世話か。

◎プロフィール

さえき あさみ
札幌市在住。福祉施設勤務。
写経・手話の勉強・南の島への旅行が今年一年の計。

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