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エッセイSP(スペシャル)

美しき永遠の秩序

梅津 邦博

2013年11月11日

 

 

 新聞社に勤める友人のヤマダ氏は東京に単身赴任中である。ぼくは上京すると、彼からありがたいことに居酒屋での飲食プラス社宅にて一宿一飯の恩義に預かったのです。そして彼の、 キヨクタダシク生きているさまに感嘆してしまった。

 仕事を終えると彼はスーパーに寄り、少し食材を買って社宅に帰った。ぼくは上がらせていただき、オオッ、と思った。玄関、ダイニング、客間、となにもかも見事にスッキリと整理整頓されていることに、息を吐き出すようにしながら感心してしまった。そして二十一時過ぎたらもう就寝なのだ。まだ早くて手持ち無沙汰なぼくは新聞を読み、それから寝た。

 翌朝、彼はキッチンに立ち、包丁やフライパンなどを駆使して料理をはじめる。そうして玄米ごはん、納豆とナメタケの味噌汁、玉子焼きとキャベツの繊切り、などがテーブルに並べられて朝ごはんとなった。男一人暮らしなのに料理はよく出来ていて、温かくて旨かった。

 食事が終わると、彼はすみやかに立ち上がって食器をシンクへ持って行くので、ぼくも慌てて皿や醤油などを持って行く。さっそく彼は洗ってゆく。長椅子に腰掛けて眺めていたぼくは、なるほど、と更に感嘆してしまった。

 自ら食事を作り、食べ終わるとすぐに洗って片付ける。常に部屋をきれいに掃除し、整理整頓する。

 天には何か意志のようなものがあるのではないか。森羅万象はどういうふうにして出来たのかをよくよく思えば、それは正しき立て分けに繋がっている気がする。あらゆる生命体が生かされてその頂点にいる最高芸術品が「人」なのだ。人には言葉と文字と考える力が与えられ、正しければ万象は呼応するのではないか。

 例えば、雪にきれいな想念と言葉をかけたら、その結晶は顕微鏡で覗くと美しい。その逆だと汚れたように歪んでいる。花にもきれいな言葉をかけたらやはりきれいに咲きつづけ、その逆だと枯れてゆくのである。ぼくも彼を見習わないといけないんじゃないか。

 食後、お礼を言って別れるのだが、彼は自転車を持ち出して逆方向へ向く。

 「どこへ行くんですか」

 いつも静かな表情でいてあまり多くを語らない彼に聞いたら、

 「出勤前にプールでひと泳ぎしてくるので、じゃ、気を付けて」

 と小さくニッコリして自転車に跨り、シャーッと走り出して行った。なぁるほどなぁ、とまたまた感嘆してしまった。

 生活にリズムとストイックな精神性がある。自然体とも言えるような清らかさや正しさが感じられる。そういうことが、災害が増大している天変地異の時代を生き残る秘訣ではないのかな。意外にもそういう人間は救われてゆくのではないかと思えてくるのだが。

 

 それにしてもなんだかあっさりした別れ方だな…。もうちょっと、こう、濃さとでもいうか、

 「あの、また電話を下さい。こっちに来たら是非うちに泊まって下さい。遠慮いりませんから。それじゃ、また会いましょう」

 とでも言ってちょっと手を振って行ったらいいのになァ。

 

 

 

◎プロフィール

帯広在住。自営業。文筆家。
著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。

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