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エッセイSP(スペシャル)

幾つも・・

たかやまじゅん

2013年8月26日

 萩、津和野、北陸が集中豪雨とニュースで報じられ、かつて訪れた場所の映像が次々と映し出された。一度足を踏み入れた土地はなぜか気になるものだ。
 朝一番に観る天気予報にしても帯広が大雨と知ると「あの人どうしてるかな」と関わった人たちの顔が浮かぶ。転勤で住んだところや旅したところは数知れず、自分の中で故郷が幾つもあるように思えてしまう。
 BS放送のお城や神社仏閣の紀行番組を録画しているのも郷愁のひとつなのかも知れない。小説を読んでも時代に関係なくそれぞれの情景が思い浮ぶようになった。
 書店で本の帯に惹かれ、手にしたのが「齢73歳にして北海道開拓を志した医師・関寛斎・・」の文字であった。瞬時に陸別町を思い浮かべる。かれこれ三十年近く前、帯広で勤務したころそこへ奔っていた。
 雪の国道242号線が足寄町を過ぎると車の床から冷たさが伝わってくる。日本一寒い町と知られる陸別町の駅前のお店を担当していた。熱いお茶をすすりながら聞いたのが関寛斎の事跡であった。地元の方から聞くことで、土地と人を深く識ることができ「雪が融けたら丘に登るといいですよ」と勧められ、眺めた町が本の中に見えてきた。
 高田郁・著の「あい 永遠にあり」は寛斎翁の妻の目を通し、幕末から明治に千葉~徳島~北海道を目指す物語。千葉の銚子・東金、札幌の山鼻、そして陸別の件りになるとあたかも一緒に辿っている錯覚すら覚える。
 帯広から札幌に移ったのが二十数年前。国道275号線で石狩川を渡ると当別町に入り、その先が月形町。この道は国道12号線の脇街道としてトラックも多く、冬道は度々凍結し一寸した坂でも滑り易く渋滞を起こす。この町の得意先でコーヒーの香りと共に語られた月形の町名由来が記憶に残っていた。
 いま読み終えた本が「われら月形の一族は、月光となって・・」と帯に書かれた葉室凛・著の「月神」であった。月形の文字に引っ掛かるものがあり手にすると、明治新政府が進める集治監建設の団長となった福岡藩出身の月形潔の物語で、福岡~東京~函館を経て開拓期の北海道の風土と人々が活き活きと綴られている。
 たまたま二冊の物語にそれぞれの場所を懐かしく感じたのは、仕事だけに留まらずそこに住む人たちからよもやまの話が聞けたからであった。

◎プロフィール

〈このごろ〉「北海道文化財保護協会」の会員になり、知識と経験豊かな人たちの中で学ぶ機会を得た。先ずは秋の東北文化財めぐりが愉しみ・・

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