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エッセイSP(スペシャル)

誤解

梅津邦博

2013年2月11日

 人は言語と感情と行動があることによってさまざまな陰陽が生じてゆく。当然のこと、何かにつけて他人についていろいろと考えたり喋ったりする。その何気ない言動に、不平、不満、批判、猜疑などが見え隠れし、勝手な思い込みによって誤解が生じている場合もあるのではないか。
 A氏はさる地方自治体の首長を勤めていたが、行政上の手法をめぐって、対立する側から後の世代に大きな負債を残すことになるなどと反対意見が噴出していた。そうして噂も聞こえてきた。「彼は退職金をもらったらこの街を捨ててさっさと故郷へ帰ってしまうのだ」という話が巷間に流布されていた。それは地方が持っている精神的閉鎖性による歪なものの見方から発したものではないか。いったいぜんたい退職した人間が、第二の人生としてどこでどう生きようと構わないではないか。周囲がとやかく言う筋合いではないだろう。政治的行政的思想的なことを逆手にとって批判攻撃するなどというのは、あまりにも酷い。その汚い噂を聞いたのかどうか、ぼくはA氏が退職後もその街で元気に暮らしているような姿を何度か見かけてはいる。
 某議員のB氏は賄賂を受け取ったなどとマスコミが報じてからというもの、世間ではとんでもない人だという見方や批判があふれていた。検察も有罪だとか言っているが、本当なのか。確たる証拠などどこにあるのか。新聞に眼を通すとなんだか犯罪者に見えてならないではないか。何を根拠にそういうことが言えるのか。その現場を見たのか。憶測で言っているのではないか。第一、地元有権者はその議員はどういう人かその人となりを少しでも知っているのか。何ひとつ知りもせず、無責任な放言をしているに過ぎないのではないか。

 以前、街中の小さな居酒屋でたまたま知り合いの道路警備員に出会った。飲みながら世間話をしていて、ふと彼いわく、 「○△×会社の社長はウチの親戚なんだよ」
 「へえっ、そうなんですか」
 「その彼がだいぶん前にあなたのことを言っていたことがあって、『あれは生意気な奴だよ、ロクに話もしないし…』と言うので、『いや違うんだ。あの人は実は耳が少し弱いためか人との話が苦手なところがあるんだよ』と教えたんだよ。すると彼は『そうだったのか…』と考え込むような顔をしていたな」
 そう聞かされて驚いてしまった。
 ぼくは人とは普通に接して話をしているつもりだが、いかんせん上手く行かなかったりすることもある。知らないうちに相手に誤解を与えるような言動があったのかもしれない。つまりは自分も他人を誤解したことがたくさんあっただろうな、と思った。視線が下を向いてしまった。

◎プロフィール

帯広在住。自営業。文筆家。
著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。
趣味=素潜り、映画、旅、風景鑑賞

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