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エッセイSP(スペシャル)

新年の記

冴木 あさみ

2024年1月15日

 元日から大きな震災や事故が相次ぎ、心の休まらない年明けでした。遭遇された方々、ご家族ご友人、関係者の方々には心からお見舞い申し上げます。

 新年早々、仕事始めの4日に常連客が商品制作の依頼にやってきた。近所に住む女性で、いつも愛犬のトイプードルをショルダーバッグに収めて来所する。私の勤める福祉事業所は縫製全般をしているので、Tシャツも何枚か制作したことがある。でも日ごろは外国ブランドのお洒落なつなぎなんかを着ている。冬には数万円もするスノーウエアをお召しになっていて、丈詰めを頼まれたこともある。もちろん飼い主の服ではない。トイプードル坊ちゃんの服の話だ。
 そんなセレブな婦人であるが、二日の日航機炎上事故に搭乗予定だったという。この愛犬が急に体調を崩し旅行は中止、急きょ516便をキャンセルしたという。
「虫の知らせというけど、私の場合は犬の知らせだね」
 ショルダーバッグからひょいと顔を出した犬の両目は白濁し、私の顔など見えていないだろう。
 同日の朝は、また職場の人の実兄が珠洲市在住ということを知った。地震発生から三日間通信不能で、食事も喉を通らなかったとのこと。幸い連絡が取れ無事を確認できた。テレビのニュースに気持ちが沈むので、心労で重い体を引きずって出勤したという。兄は暫く避難生活が続くに違いない。生存確認でほっとしたのもつかの間、そこから苦難の第二幕が始まる。今後一体いくつのハードルを越えなければならないのか。
 地震発生から一週間を経ても、被害の全容がつかめないというのは一つの恐怖だ。山間部の多い複雑な地形の半島とはいえ、救助どころか状況把握さえできないとは。これまで前兆ともいえる地震が繰り返し発生していた。しかも高齢化率五十%を超える集落もあるというではないか。土砂崩れや道路の損壊は想定内のはず。道の寸断を支援の遅れの理由にしてはならないと思う。百機でも二百機でも、ある限りのヘリを飛ばすとか、誰か指示できなかったのか。私のようなひらひらの平民の知らぬ事情でもあったのだろう。
 何事も、対策に完璧は無い。
 今後起こりうる危機は自然災害にとどまらない。万が一、世界秩序を無視する国なり組織が北海道に上陸する可能性も、この世界情勢において誰が杞憂と笑いとばせるだろう。
 数十年前、誕生間もない息子の寝顔に誓ったことがある。
「この子は絶対戦場へは送らない」
 儚い願いに終わらぬよう祈るしかない。

◎プロフィール

〈作者近況〉さえき あさみ
初詣もまだだし、はっと気づくと七草がゆも食べ損ねていた。令和6年、大きく出遅れてしまった。

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