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エッセイSP(スペシャル)

艶・・

たかやまじゅん

2023年11月20日

 劇場で舞台やステージを観る時にはどの席を選ぶか。少しでも間近な席でご贔屓の役者やお目当ての歌い手を観たいと思うのはファンの心情に他ならない。しかし昨今のネットで申し込むライブや観劇の先行発売では、自動的に抽出され同じ値段でも後部や階上席になりガッカリすることもある。
 芝居好きにとって一番見易いとされるのが『とちり席』、これは昔の芝居小屋は席順が前から「いろはにほへと ちりぬる・・」となっていた。つまり、と・ち・りとは7~9列の中央付近にあたり、ステージに立つ人の顔や舞台全体を見渡すことが出来るからだ。
 歌舞伎などではここに芝居の見巧者(みごうしゃ)が多く、舞台上からもそこに目線が行くので緊張すると言われ、焦ったり失敗することを指すトチルに由来した。実際に私も人前で話す機会を得て登壇した際、自然と中央席に目線が走り、座っている人の表情が気になることがある。
 この〝とちる〟は、室町時代に橡(栃)の実から蕎麦に似た橡麵を作るのに、麵棒で素早く伸ばさないと麵が固くなってしまうことから『橡麵棒を振るう』ことと言われ、慌てる様を表す「面食らう」や「とちめく」と同様に例えられるそうな。
 さて直近の観劇は、9月下旬に名古屋御園座で舟木一夫さんのコンサートを観る。この日の席はまさにとちりの席であり、場内の灯りが落ち前奏に続き幕が上がると、ステージは艶(あで)やかな照明が煌めき、中央にその姿が浮かんでいた。そしてマイクから流れる歌声は館内を包み込み、5月に観た京都南座より一段と声に艶っぽさを感じるのだった。
 女性ファンなら前列でうっとりと姿を見つめたいのだろうが、私にはこの席が程よく、どのような選曲と構成でステージが進行されるのか、ワクワクするひとときとなった。何年か前、大阪新歌舞伎座では2階席の最前列からステージ全体が見渡せ、舞台の彩りの中で唄う姿を垣間見ることが出来た。
 デビュー以来60年、お歳は五つ先輩にあたるのだが、齢を感じさず回を追うごとに磨きのかかった艶はどこから来ているのだろうか。きっと人知れずに努力されているに違いない。その秘訣を知りたいものだ。
 これまでFMラジオの番組でも舟木さんの歌を構成してきた。最近、レコードアルバムで発売されたままの楽曲が次々とCDで甦った。何れ番組でクリアな音を選曲しようと思い描いている。

◎プロフィール

家人と家飲みする機会が増え、たいがいは缶ビールになり、ついついツマミに手を出してしまう。気付くと胴回りが・・。

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