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エッセイSP(スペシャル)

元気の秘訣

冴木 あさみ

2023年11月 6日

 錦秋の某日、私の勤める福祉事業所の職員と利用者一同で、日帰りのバス旅行に出かけた。福祉バスというのがあり、福祉該当者は無料で利用できる。移動範囲と時間は制限されているので、候補地の希望を取りまとめるのには一苦労だ。谷田製菓から始まり、締めはサッポロビール恵庭工場という、食べたり飲んだりの胃袋コースになってしまった。
 ことのほか出来立てビールを楽しみにしていた私だったが、その日思いがけない光景を目にすることになる。自分が一番"飲めるクチ"と思っていたが、利用者さん方の飲みっぷりに圧倒された。私は二杯目のグラスに苦戦しているというのに、皆は涼しい顔でくいくいとグラスを空にする。向かい合わせた利用者は、八十二歳の女性。
「強いね~」
 大げさにお腹をさすりながら苦笑いを送ると、彼女曰く。
「毎晩赤ワインをグラス二杯飲んでいるの。よく眠れるようにね」
 しかも、辛口のフルボディーというから恐れ入った。
 赤ワインはポリフェノールが含まれているので、少量飲むのは健康にいいと言われている。しかし、健康に関する諸説には常に賛否両論があり、アルコールは少量でも脳に悪影響を及ぼし、認知機能も低下させると断言する専門家もいる。これは肉にも通じる。高齢者こそ進んで肉を食べれば元気で長生きできるという説。肉を食べるから元気な余生を獲得できるのか、元来元気だから高齢でも肉を食せるのか、結論は出ていない。
 件の八十二歳の彼女は、背中が曲がってはいるが、特段健康には問題なく、ほぼ毎月皆勤賞を授与するに値する。朝は始業三十分以上前に到着し、身支度を整え、お茶や健康ドリンクを飲んだり、お喋りしたりと忙しい。おしゃべりと言っても彼女はろうあ者なので手話で会話する。
 仕事は一日五時間。手工芸品の制作や、軽作業をして過ごす。疲れたから早退するという日はないが、年に一~二度どこか節々が痛いと医者に行くことがある。
「加齢のせいでしょう」
 医師に鎮痛剤を打たれて終わり。翌日からまた元気に現れる。
 肉はあまり食さない。口の中まで覗いたことはないが、きっと一部入れ歯だと思う。でも、彼女はきちんと化粧をして、髪の毛を染め、明るい配色のコーディネートは生き生きとした印象を与えている。きれいにネイルを施したその手で、ワイングラスを口に運ぶのか。なかなかおしゃれではないか! 
 それでは私も...。長年ご無沙汰だった赤ワインを買って飲んだ。三日と続かず、四日目に口唇ヘルペスを発症。因果関係は分からない。
 生活習慣の改善は大事だろうが、本質的に頑健な人が元気で長生きしているだけの話だと、今は思っている。

◎プロフィール

アルコールにめっきり弱くなったが、バーボンやジンはやっぱりストレートが美味しい。

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