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エッセイSP(スペシャル)

緑雨・・

たかやまじゅん

2023年7月17日

 ハローキティでデザインされ、「キティはるか」の愛称で人気の関空特急はるか号が京都駅30番線に滑り込む。通路には大きなキャリーバックを押す人が列をなし、ようやくホームを歩き出すと、嵐山方面からの嵯峨野線を降りた人波と重なり、揉まれながら中央口まで辿り着く。3年半ぶりで京都を訪れたのだが、海外からの旅行客もこの時期を待っていたようだ。
 歴史や文化が好きな私とて、京都にはまだ知らない所があり、時の移ろいで様々な情景を魅せてくれる。機を得た新緑の季節にあたり、桜や紅葉と違う青もみじや苔の碧の世界は心を癒し、建仁寺では本坊中庭の潮音庭で、芽吹いたばかりの青葉が風でそよぐ様を床に腰を下ろし見つめてしまう。以前なら、あれもここもと予定を組んだものだが、自分の齢を加味しつつ廻ることにした。
 嵐山にある福田美術館は、所蔵品に伊藤若冲や上村松園などの日本絵画が多く、展示作品それぞれをイヤホンガイドが説明してくれる。2019年秋のオープンした際は2回も立ち寄った程だ。美術品を堪能した後は、無垢材の家具を配したカフェテラスから眺める庭園が心を和ませてくれ、眼下の街並みや大堰川と渡月橋は、京都らしさを醸し出している。
 しばらく美術館を訪れる機会がなかったので嵐山に向かう。列車が京都駅を出ると空がどんよりしてきて、着く頃には土砂降りとなった。旅行に携行する折り畳み傘ではとうてい間に合わず、コンビニで傘を求めた。やがて雨脚は激しくなり足元を濡らす。
 天龍寺の前を往くと傘の花が車道まで溢れていた。この季節は修学旅行も多く、生徒たちは引率の先生と添乗員の誘導で粛々と移動している。ところが観光客の一部は、歩道の真ん中で立ち話をし始め、妨げとなって前に進めない。欧米人の場合は、擦れ違うと大柄な私でも体格で負けそうになり、道を譲ると微笑んで頭を下げてくれた。これもお国柄の違いだろうか・・。
 館内での鑑賞が終わりカフェでひと息付く。目の前の池は軒先の滴が水面に波紋を拡げ、辺り一面が緑と溶け合って、周りの山も川も橋も緑の雨にかすむ。ふと、「濡れてやさしい みどりの雨よ」と大阪ろまん(フランク永井)の一節が浮かんできた。

◎プロフィール

南座で円熟した舟木一夫さんの歌声、札幌ドームは大音響の中でのドリカム、ヒタルで歌舞伎の粋を堪能。やはり舞台は生に限る。

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