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エッセイSP(スペシャル)

ムダ・・

たかやまじゅん

2023年4月17日

 日常、身近に使うものは限られている。例えば机にあるペン立てには何本ものボールペン、読み終わった本は部屋の片隅で山積み、そして廊下の棚にCDをびっしりと詰め込んだ。これらは何も言わない〝無用の長物〟に違いないのだが、それは私にとって見慣れた風景のひとつでもある。
 世の中には無駄足、無駄話、時間の無駄など無駄の付く言葉は多い。この無駄とは馬で物を運んでいた頃、荷物を一駄、二駄と数え、積まない空の馬を何の足しにもならない無駄と呼んだことに由来するとされてきた。だがこれは俗説のようだと物の本にあり、昨今は何の意味のない「むな(空)」が転じた「むなしい」のことで、無利益を表すそうだ。
 一見ハンドルの遊びも無駄なようだが、このゆとりこそが重要であり安全運転が出来る。つまり何もしないことが無駄であり、余裕を持ち動くことこそが自分の経験や知識になると言われるようになった。
 ラジオ番組の構成で選曲する際、ストックした音源を探すのに同じ棚を何回も出したり入れたりして、つくづくムダな時間を費やしているなと思うのだが、ひとたび探し始めると「この曲は次に使える」とか、「あの歌がここに入っていた」と再発見することも少なくない。これに費やした手間暇は、私にとってけっしてムダではなく、そこにあるのは単に物を除けておいただけと言える。
 世の中はこの3年余りを、不可解なウイルスと言う閉塞感に左右され、外で語らうことは元より食べることも控え、人とすれ違ってもマスクで遮られ、表情すら分からず仕舞いとなった。まして外に出る機会の多かった私だが、飛行機に乗ることもはばかられた。こうしてそれぞれが立場立場で対応や防御に多くの時間を割かざるを得なく、これに費やしたエネルギーを費用換算したら膨大な損失と言っても過言ではない。
 しかし家に籠って無為に過ごすのではなく、これまで手を付けていないものに目を向け、新たな思いを巡らすことで、ムダと思われた日々は力を養う雌伏の期間となり、身の周りにあるものがけっしてムダと言わず〝無用の用〟となった。何れこれが書くことや喋ることに繋がることに他ならない。
 そして時は移り、いま再び外に向かって新たな視野を拡げようと動き出そうとしている。

◎プロフィール

〈このごろ〉病院で幼い子を抱いた若い男性が隣に来たので席を譲る。帰りに彼が「席をありがとうございます」と頭を下げた。頑張れ、お父さん!

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