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エッセイSP(スペシャル)

日常

冴木 あさみ

2020年12月 7日

 忘年会シーズン到来。コロナウイルスさえ存在しなければ、賑やかで華やかで気ぜわしい師走のはずだっただろう。
 この一年を振り返っても、何をやっていたのかよく思い出せない。2月末の北海道緊急事態宣言以降、マスクを手放せず、衛生面で気を配り過ぎる生活を続けていた。毎日判で押したような生活の繰り返し。大通り公園のイベントも軒並み中止になり、毎年恒例のイベントがいかに季節の移り変わりを実感させてくれていたかを改めて知る。
 買い物も不自由になった。レジには厚手の透明シートが下がり客との間を遮断している。レジ係がマスクの上にフェイスシールドを付けていると、ほとんど声は聞き取れない。いつも利用する店では「クーポン券や駐車券はありますか?」が定番なので聞こえなくても問題ない。しかし、行きつけない店では違う。「ふんふん」と聞こえてないけど(まっ、いいか)と曖昧な返事をして聞き返されることもある。聞き返されてもよく聞こえない時もしばしば。私は毎年の健康診断で聴力検査もしているが、聞こえは良好の筈である。店員さんは透明シートにちょっと寄って目を見開いて「もごもご」話してくれる。う~ん、聞こえない。手を止めさせて申し訳ないと、私もシートに寄り添い聞き耳を立てる。会話の成立を諦めて適当に応対してくれる店員さんはいい。それで結構。でも心根のいい店員さん、可愛い若い娘さんに限って声もか細く可愛らしい。ぐずぐず言い訳をする子によく雷を落としていた先生の声が何十年か振りに蘇る。
「もっと腹に力を入れて話さんかい!」
その声に押され、私はレジのシートをめくって頭を突っ込んで「はぁ?」と聞きたい衝動に駆られる。
「ショップバッグは有料となりますが」
「いいえ、ありません」(割引券のことかな?)
「メンバーズカードはお持ちですか?」
「あ、現金で!」(電子決済のことかな?)
 予測で返答するとお笑いのネタになってしまう。面倒をかけているようで肩身が狭くなり、筆談したくなるほど戸惑ってしまう。
 聴覚障害者や難聴の高齢者は、コロナ禍でなくともこれが日常なのだろうと、つくづく障害という不便さを実感する。マスクをしていると、いつもの階段も途中で息が辛くなりゼイゼイ。年をとり体力が衰えるとこれが日常。感染予防のため会食も自粛して休日もステイホーム。社会から孤立した老人はこれが日常。コロナ禍に於いて誰もが弱者になった経験を、アフターコロナに忘れてはならないと思う。

◎プロフィール

さえき あさみ
買い物は二十分で済ませるけれど、本屋ではそうはいかない。秋の夜長はやっぱり読書。

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