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エッセイSP(スペシャル)

自 営 業

吉田 政勝

2017年2月27日

 営業ダメな私が独立できるのか?そんな不安もあったが、帯広市内に自営のデザイン事務所を開いた。
 25年前だった。パソコンやプリンターなどの設備投資をし、自営業を開始したが、営業能力には全く自信がなかった。ただ、仕事への熱意と実績があるだけだった。
 私の自宅は芽室町内にあり、独立前近所のFさんから「産業観光まつり」のポスターを依頼されて仕上げていた。Fさんはイベントの実行委員だった。やがて、役場内でも私の仕事ぶりが評価され「次のポスターも頼む」と観光係長に言われた。
 独立して1年後に町長選挙があった。候補はH町職員とT道庁職員。町職員が有利という下馬評だったが、私はT候補の後援会からリーフレットや法定はがきを頼まれた。幹事長が岡本晴樹氏だった。彼と何度もプロパガンダの文案を練った。
 T候補が変革ムードに乗って勝った。その直後に私は芽室町観光協会の理事に任命された。やがて、会長が岡本さんになった。岡本会長は民間的主導の自由討論で方針を決めるタイプだった。その岡本会長に共感し、彼の期待に応えて大きな仕事を次々と仕上げた。また、岡本会長や事務局の意向を受けて、他の課に代弁して伝えたことがあった。それが職員にとっては私の個人的見解と解釈され刺激したと後で気付いた。
 平成18年に岡本会長が肺ガン治療のため辞任し、秋に亡くなった。葬儀に参列し、岡本さんありがとう、と感謝した。彼の後ろ盾で仕事ができたが、潮目が変わってきた。新会長体制で、官主導が強くなってきたのだ。さらに、この年T町長が引退した。
 5社競合ポスターコンペがあった。それまでは私の随意契約だった。その結果を知って驚いた。私の撮った写真を盗用した作品が採用されたのだ。小耳にはさんだ審査の様子にも疑惑が増した。それらに異議あり、と新会長に私は理事の辞任を届け出た。
 顔のある恩人たちによって仕事を与えられ、顔のない人々の画策によって排除されていた。主な仕事の居場所を追放された私は、自分の専門性にこだわらず、広い需要を求めて派遣の労働を始めたのだった。

◎プロフィール

北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。「流転・依田勉三と晩成社の人々」刊行。

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