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エッセイSP(スペシャル)

伊豆の伊東で

吉田 政勝

2015年10月26日

 伊豆の下田から伊豆急行に乗った。10月9日であった。目指すは伊豆高原の2つ手前の駅「北川」。10時半に着いた北川駅は無人駅だった。下り坂を歩き始めた。
 旅行ガイドの本で見た、海辺にある露天風呂の光景が気に入って、ぜひ写真に撮りたいと思った。旅行かばんを手に持ち歩きつづけた。途中、喫茶店の前で男性がいたので「黒根岩風呂はどこですか」と訊ねた。「あの小屋から降りたところ。でも、13時まで休業だよ」と教えてくれた。石段を降りると露天風呂があった。興奮して何枚も撮った。満足して石段を上った。
 携帯が鳴った。「私は青のTシャツが目印です」と伝える。ややするとグレーのセダンが停まった。「意外と背が高いですね」と沼田さんは笑った。お世話になります、と私は頭をさげた。
 沼田さんは伊東市で「サガミヤ書店」を営む社長である。今年の3月末に私は「流転・依田勉三と晩成社の人々」を自費出版した。その本の紹介が「静岡新聞」に載った。それを読んだ沼田社長から電話で10册の本の注文があった。うれしくて、すぐに発送した。以降、沼田社長へ手紙を書いたり、短いメールを送っていた。
 10月7日に松崎町で講演があり、伊東市に立ち寄るかもしれない、と沼田社長に伝えた。「伊東市の観光地を案内します」という返事だった。迷惑ではないですか、と念をおした。電車やバスを乗り継いで自分でゆくつもりだった。むしろその方が気が楽なのだ。
 一方で、伊東市の観光資料を送ってくださり、電話で気さくに話す沼田社長と会ってみたい、という思惑もあった。迷いながらも観光ガイドと運転手を沼田社長に頼むことになった。あらかじめ帯広のお菓子の詰め合わせを送った。お世話になります、というほんの気持ちだった。
 車に乗ると「流転~」の本10册分の売り上げ額が入った封筒を渡された。沼田社長の運転で「城ケ崎海岸」へ向かう。つり橋を渡り、星野哲郎氏の詞が刻まれた碑の前で記念写真を撮ってもらった。
 「なぎさ公園」にある重岡建治氏の制作したブロンズ像を見てまわった。家族というテーマで感動的な作品群だった。
「重岡さんの作品は独特のデフォルメですが、これは市の予算不足で金属を節約するためだそうです。それに重岡さんの人柄は市民からとても親しまれてます」と沼田社長からの説明を聞いて、私はうなずいた。
 一人での観光地めぐりでは分からない情報だった。実際の沼田社長との交流から知識が得られた。伊東で生活する知識人の沼田さんから学ぶことがたくさんあった。ありがたいと心底思った1日だった。

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。「流転・依田勉三と晩成社の人々」刊行。

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