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エッセイSP(スペシャル)

訃  報

冴木 あさみ

2015年10月 5日

 私は小さな福祉事業所で障害者の就労支援員をしている。自分に出来る仕事は全て行っていて、庶務も私の仕事だ。そろそろ職員の健康診断の予定もたてなければならない。数多くある検査項目のどの範囲までが必要だろうかと他の理事と相談していたその頃だった。女優の川島なお美が癌で他界のニュースが流れたのは。
 九月の初め夫と共にテレビに出ていた。相変わらずの美しさだったが、こけた頬はメイクでは隠すことはできない。だぶだぶの長い手袋はサイズが大きいのではなく腕が細すぎたせい。首から二の腕にかけての痩せ方は尋常ではない。反して腹部の膨らみ。昨年癌の手術をしたとのことだが、腹水が溜まっているのだとしたら相当危ないのではないか。笑顔でしっかりと受け答えをし、今後の舞台への意気込みを語っていた彼女。それから一カ月もたたぬ間の訃報だった。
 医学の進歩で5年後生存率も高くなってきた。早期発見で完治可能な癌もあるが、やっぱり日本人の死因のトップであることは変わらない。発見が難しく治療が困難な類もある。原因も予防も確かではない。すべては統計的な分析に過ぎず、そこには個という事情は存在しない。誰がどのくじを引いてしまうか全くわからない。病が見つかった時点をスタートとすると、そこからどの方向へ向かうのか、目の前に現れるいくつもの分かれ道を患者は選び進んでいくしかない。立ち止まることも後戻りすることも許されない過酷な人生ゲームのような気がしてならない。
 川島なお美は化学療法を拒否し、民間療法を選んだとのこと。手術の際余命を告げられていたというから「…ならば、最後まで女優として、美しい姿のままで」と覚悟したのかもしれない。もしも彼女に子供がいたら、種類の違った病であったら、違った選択をしていただろうか。
 訃報の直前、人気タレント北斗晶が乳がん手術を受けるという報道があった。毎年検診を受けていたにも拘らず癌は既にリンパ節まで侵しているとか。進行性という言葉に無気味さを感じる。家族に囲まれて病と闘う決意をした北斗晶。家族の絆を見せてくれた二十四時間マラソンは今も記憶に残っている。彼女ならきっと闘病生活を乗り切ってくれるのではないかと思う。
 癌に限らずタレントや著名人の病との向き合い方は私たちに様々なことを投げかける。孤独な長い闘病に勇気を貰う人。自分の身体に無頓着な人が検診を受けるきっかけになることもあるだろう。苦に直面して楽を知り、死を間近に見て生を考えるものなのだろう。

◎プロフィール

さえき あさみ
札幌市在住。福祉事業所勤務。
今年は地面を蹴って羽ばたく年に。
就寝前の読書は最近暫く敬遠していたフィクションの世界に浸っている。

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