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エッセイSP(スペシャル)

伊豆より

吉田 政勝

2018年8月27日

 19日に宅配便が届いた。
 静岡県松崎町の松本晴雄さんからだった。箱を開けると、鰹なまり節、乾燥ひじき、金目鯛のお茶漬け、羊羹、干しそばなどが入っていて、見るからにおいしい伊豆特産品だった。
 贈りものをいただくのは嬉しいが、どこかで気持ちの負担が生じる。それは「お返しに何をしようか、返礼を送る時期は」など、いろいろな思惑が胸に浮かぶ。だが、私にはすぐにその松本さんからの宅配便の意味が理解できたので口元が緩んだ。
 1週間前に、とうきびとオリゴ糖を入れた箱に、仕上げた直後の「銃太郎とコカトアン」という史実に沿った物語のプリントを入れていた。これはいずれ本にする予定だ。
 松本さんは依田勉三の小説「風吹け、波たて」の著者で、4年ほど前からメールや手紙でご交誼とご鞭撻をいただいている間柄だった。
 私は3年前に「依田勉三と晩成社の人々」を自費出版した。その直後に松崎に呼んでくれて講演を進めてくださったのが松本さんだった。
 講演の日に、共に会食し、松崎町を案内していただいた。その松本さんに、わが苦心作をまず最初に読んでもらいたいと思った。
 小説はおしなべて不特定多数に向けて出版されるが、その前に信頼できる、たった1人の方に読んでほしいという著者の念(ねが)いがあった。当人には迷惑な話である。
 伊豆物産が届いたのは、とうきびの返礼という意味もあるが、原稿用紙換算で360枚の拙作に対して、ねぎらいもあると推察できた。すぐに松本さんからメールが届いた。「読破しました。とくにアイヌの人々と主人公の交流表現が素晴らしい」と記され、作品の欠如要素を指摘され、正鵠(せいこく)を射た意見とうなずいた私はすぐに原稿に手を加えた。
 昨年は東伊豆(片瀬)でも私の講演が行われ、翌日は松崎町の依田勉三の生家でも講演が開催された。蔭で尽力されたのが松本さんだった。
 アイヌ語でイランカラプチは「こんにちは」だが、おまえさまの心に寄りそってもよいか、という意味がある。人は経済関係の金銭だけではなく「心の琴線」とふれあうことが肝要だ。

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
孤独の時間をどう過ごすか。それこそ読書の環境ではないか。黙っていても酒やワインのように人は熟成しないものなり。

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