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エッセイSP(スペシャル)

不適切な言葉

冴木 あさみ

2018年2月 5日

 少し前土曜は寅さんというキャッチフレーズで毎週土曜の夜BSで『男はつらいよ』が放映されていた。シリーズ全四十八作品。とうとう終わってしまったかと思っていたら「やっぱり土曜は寅さん!」ということで、再び同じ局同じ時間帯で現在放映されている。よほどリクエストが多かったのだろう。それともこのテレビ氷河期、寅さん以上に視聴率を稼げる策はなかったか?などと意地悪な笑みを浮かべつつ、二ラウンド目を楽しんでいる。私にとって一週間分の疲労とストレスをリセットするにふさわしい、平和で心癒される二時間という位置づけになっている。展開が解っていても飽きることはない。古い団子屋の茶の間と家族、寅さんの四角い顔が脳にアルファー波を発生させるのかもしれない。
 〝放送上不適切なせりふがありますが、作者の意図を尊重してそのまま放送します〟
 寅さんの映画はこのテロップから始まる。古い映画やドラマの放送前にたびたび目にする。差別用語や適切ではない言葉遣いの規制がやたら厳しくなっているが、寅さんの映画はいい時代に制作されて世に残すことが出来たものだと毎週感じている。小さな一コマを切り取れば不適切かもしれないが、作品全体は誰を傷つけるものではなく、一貫して人情の温かみを謳っている。主人公の寅さんの職業はテキヤ。上品で場にそぐう言葉を使う柄ではない。しかも生粋の江戸っ子。機嫌の悪い時のべらんめえ言葉は常識で、口からポンポン不適切言葉が飛び出すことは止められない。寅さんという人物設定は特異かもしれないが、寅さんだから許されるセリフかもしれない。最近SNSで「不適切」な書き込みをしたため、泣きながら辞職した町議がいたが、これは言語道断。次元の違う悪意に満ちた「不適切」だった。

 昭和の時代までは身体的、経済的、出身等において差別的表現は多く使われてきた。先進国になった日本は経済的基盤も出来て、平等という観念が生まれ、人権尊重のステップまで目が向くようになった。肉体的暴力はもってのほかだが精神的にも人を傷つけてはいけない。よって侮蔑的言葉の排除を強化してきた。一昔前の弱者に対する表現はいかに残酷なものが多かったことか。人権問題と並行し、北欧などの福祉先進国をお手本に福祉にも力がそそがれている。国を挙げての施策だ。なのになぜ、精神疾患者は増加の一途をたどり、引きこもりも減らないのだろう。はばかることなく不適切な言葉が使われていた野蛮な時代の方が、国民は逞しかったのではなかろうか。人権を勝ち取る過程で、何かをどこかに置き忘れてきたような気がしてならない。

◎プロフィール

●作者近況
さえき あさみ
さっぽろ雪まつり開幕!変わり映えしないけどつい仕事帰り寄ってしまう。旅行気分を味わえるから。

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