無
2022年4月 4日
知人の愛犬が亡くなった。十四歳。寿命かもしれないが、家族を失う悲しみほど辛いものはない。電話の向こうから聞こえる涙声の訃報に、返す言葉は見つからない。最期を見送ってねと短く告げることしかできなかった。 数年前、私も愛情を注いできた愛犬を失
話しかけた子供は
2022年3月28日
写真を撮って文を書いている。フリーな契約で取材を始めて8年ほどになる。 思い返すとコンサートや落語、イベントなど楽しい会場に足を運んだ。聴くだけなら楽しいが、私は内容を把握して写真を撮らなくてはならない。仕事なので心底からは楽しめない。右
mask・・
2022年3月22日
子どもの頃に観ていたテレビのヒーローは、普段は身近にいるオジさんやお兄さんだが、ひとたび事件が起きると布で顔を隠しマントを翻して正義の味方として活躍する。 これを真似したのが、当時の〝ヒーローごっこ〟であり、風呂敷を肩にかけ手ぬぐいでマス
食堂はどこにあるのか
2022年3月14日
ある日のお昼時。母上が、 「御飯がないからどこかへ食べに行こう」 と当然のごとく言った。時折そういうことがあるのだ。そして本人の頭には、天丼か、親子丼か、はたまたパスタだとかなどが浮かんでいるに違いない。 「なに、ご飯がないってか...。
平等という儚さ
2022年3月 7日
平等という言葉をよく口にする人がいる。実は障がい福祉の仕事をしている私もそうだ。日頃職員には「利用者への支援は常に平等を考えて」と伝えている。とりわけ聴覚障害者への配慮は十分すぎるほど気を付けている。健聴者と同様に情報が伝わるように。聴覚
取材のあとで
2022年2月28日
取材で子供たちと会うのが楽しみだ。コロナ感染防止で顔はマスクで隠れるが、目と髪型で人物を特定する。 顔と名前を一致させるには記憶力も低下してきたが、出会った人の名前を漢字でおぼえるように心がけている。「書初め大会」の取材へ向った。公民館の
薬味・・
2022年2月21日
蕎麦を手繰る際に欠かせないのがワサビとトウガラシで、素材を引き立てる脇役だが適度に刺激を与えてくれる。中でも東京〝やげん堀〟の七味唐辛子は、デパートの江戸老舗展が開催するのが待ち遠しかった。それは必ず薬味の調合師が来ているので、「山椒を効
不遇な勉強
2022年2月14日
テレビニュースで戦場やアフリカとかどこかの子供たちが、バラック小屋あるいはがれきの中で勉強している映像を何度か観たことがある。政治や生活の環境としては大変ではないのかと思う。それでも子供たちは皆明るい表情をしていることに、ぼくは項垂れてし
一体どうなってるの?
2022年2月 7日
昨年の大みそかは長崎にいた。師走の仕事は予想以上の忙しさで旅支度もできず、出発当日にトランクに洋服を放り込み空港へ向かった。初めての地、土地勘もなく、下準備もなし。旅行雑誌を買ったものの目も通さないまま現地に着いた。こういう時は半日市内観
雪おんな・・
2022年1月31日
雪のない温暖な土地で育った私は、子どもの頃から雪だるまを作るのに憧れ、ニュースで雪の便りを見るにつけ、行ってみたいと思っていた。それが今では、雪の朝に家の前で雪かきをする生活となり十数年経つ。日によって雪の降り方、時間で違う雪質なども分か