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エッセイSP(スペシャル)

仕事をするということ

梅津 邦博

2018年1月22日

 以前、利用していたあるクリーニングの店に、おっとりとしていながらも客に気を遣うオバさんがいた。商品の仕上がり状態、シミ、ボタン欠落など細かくチェックする。そのちゃんと向き合っている姿にこちらは安心する。それがある日、定年ということで退職された。
 しかし次に入ってきた新しいオバさんが問題だった。応対ぶりが悪い。四畳半くらいの小さな店内は前面にカウンターがあり、後ろや横には仕上がったクリーニング品がたくさんバーに掛けてある。スタッフは、常に来られる客に対応しなくてはならないはずではないか。カウンターにでも付いているべきではと思うが、いつもいない。
 掛けてあるクリーニング品の裏側にテーブル席があるらしく、テレビかマンガか昼寝なのか、とにかく行くたびに握りこぶしでカウンターをコンコンと叩いて知らせる。するとオバさんはのっそりと不愛想な顔で現れるので、ぼくは言った。
 「カウンターにいるべきじゃないですか…」
 悪想念のふくれっ面顔でクリーニング品を渡す。長年使っていた店だったが、ぼくはそれっきり辞めて、別の店に変えた。
 人間社会が劣化して壊れてきているような世の中になっている。客に応対するのにロクな笑顔もなく挨拶も出来ないとしたら、その店や会社は死に体になっているのだろう。

 イオン帯広店内のフードコート端のテーブル席で、ぼくは原稿チェックをしていた。ふと、見ると離れた通路側の一角で、アニメキャラクターのスタンドパネルを立て置き、側に並べたふたつの細長テーブルをはさんで椅子がある。
 リーダーらしき40代の男は、3,4人のスタッフに指示を出し、自分の立ち位置と周囲と距離を測ってパンフレットや商品を確認整理するなど、メリハリのある動きをしている。スタッフとともに、浮いているいくつかのカラフル風船の紐を片手に持っていた。幼児連れの若いお母さんが近くを通るたびに、明るく落ち着きながら近寄って「おはようございます」と挨拶し、子供たちに1本ずつ差し上げていた。幼児たちは歓声を上げ、母親はお礼を言っていた。その自然体で礼儀正しく接しているさまに、説得力があるような対応をされているのが遠目にも伝わってくる。幼児用英語教材のプロモーションをしているのだった。
 まさしく彼は仕事をしているのだ。物事の要素を積み重ねてゆくそのありように、仕事の方向性から創造性へと向かえる可能性が見え隠れしているのだ。仕事をするということはどういうことなのか、ということの見本がそこにあるのだった。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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