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エッセイSP(スペシャル)

子供の声が響く町

冴木 あさみ

2017年9月 4日

 やけに早く目覚めた日曜日、窓を開け外の空気を部屋に呼び込む。届いたばかりの新聞に目を通し、前夜の本を読み進めるうちに気持ちよく二度寝に入ったものの、走る車のスピーカーから呼びかける声に起こされた。
 「本日、9時から町内の子供運動会を行いま~す」
 定刻9時の開会の声を合図に、賑やかな子供たちの声が響き渡った。会場は芝生の公園なので徒競走はできないが、様々なゲームに子供たちの歓声があがる。
 町内会の役員だろう。毎年恒例の連合町内会の夏祭りの総合司会者を務めている男性の実況放送が聞こえる。
 8月初めの土曜日の昼から翌日曜日の夜まで、ずっとこの方の司会で進行される。見たところ七十前だろうか。声に張りがあり動きも機敏。マイク使用とはいえ喉も嗄らさず二日間祭りを盛り上げ、仕切るだけの活力と才に満ちている。私の住むマンションの隣りなので、この期間テレビの音は殆ど聞こえない。公園側に直接面していなくとも、窓を開けていると炭火で炙るイカや焼き鳥のいい匂いが流れてきて私の胃袋も祭り会場へと誘われる。高く響き渡るマイクの声、音楽、大勢の歓声に辟易する人もいるかもしれないが、毎年開催されているということは地域に支持されている証拠だろう。テレビの音が二日半聞こえなくても「いい町に住んでいるな」という思いのほうが大きい。
 ところで、待機児童問題対策の進捗状況はどうなっているだろう。若者の結婚や出産の決断にブレーキをかけている一因に待機児童の問題があると分析されている。保育職の低賃金に伴う人材確保の課題のほかに、保育所設立も容易ではないという。
 特に住宅地への保育所進出は住民の反対で実現できないとのこと。子供の声がうるさい、送迎の車で渋滞するなどが主な理由らしい。「閑静な住宅街」を作り守ってきたのはそこの住民で、何十年とかけて出来上がった彼らにとっての安住の地に侵入してほしくないという気持ちはわかる。自分の孫は可愛くても、他人の子は可愛くないと言う人もいる。さらに現代の若い親への共感もそうそう簡単ではない。送迎時のちょっとしたマナーの悪さにストレスを感じることもあるだろう。
 「了見が狭い町内」というレッテルを貼ることなく、どう折り合いをつけられるか、行政も知恵を絞って取り組んでもらえたらどんなにいいだろう。懐の深い町づくりは、人口の減っていく日本の今後の課題ではないだろうか。
 隣の公園では昼で運動会は終了し、また静かな住宅街の日曜日に戻った。この賑わいが終われば秋がやってくる。

◎プロフィール

久しぶりに小樽を散歩した。どの通りも人でいっぱい。ブラブラ歩きのつまみ食いが楽しい街だ。

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