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エッセイSP(スペシャル)

遠い夢、近い夢

吉田 政勝

2017年5月29日

 小説か自叙伝かわからないが、世間には「本を出したい」という人がいる。
 その人の努力によって夢は実現すると信じたいが、文学で一角の才能を発揮するのは難度が高い。
 私も30代で小説新人賞に必死に応募したが「小説現代」など2作ほど2次予選に名が残った程度だった。その後、運よく新聞にコラムを書き、こうしてエッセイを載せていただき、それらをまとめて本に出版できた。定年後はひとり出版社として「流転」という依田勉三伝を本にまとめることができた。
 言葉を紡いでやや需要のある本をまとめるのは容易ではない。その苦労を少しは体験しているので、唐突に本を出したいと表明した人に、それは本気なのだろうかと思う。 
 私は本を読むのが好きだが、映画も数多く観ている。映画は総合芸術だから原作や脚本として文学性を必要としている。創作であれ実録ものであれ映像の疑似体験に学ぶことは多い。
 映画監督ではフィンランドの名匠アキ・カウリスマキの作品が好きだ。「浮き雲」や「街のあかり」など俳優の寡黙さや独特な短い台詞が印象的だ。絶望的な人生でほんの少しの好転が救いになる作品が多い。
 同監督の作品で「愛しのタチアナ」は中篇モノクロ映画だったが、結末には笑ってしまった。
 無口でシャイな男2人があてのない旅に出る。途中で車に乗せたロシア人女性2人と共に送るロードムービー。
 女たちはエストニアの首都にゆくのが目的。タチアナを家まで送り到着すると突然男のレイノは「俺はここに残る」と言ってタチアナの頬にキスすると2人は家の中へ消えた。旅の間で2人は親密になっていた。その時レイノは「よし、おれは小説家になる」と発した。それを聞いた連れの男は呆然とし、淋しく1人で帰っていった。
 レイノはロッカー気取りの酔っぱらいで、髪にポマードを塗り、革ジャンを羽織って自動車修理工をしていた。陰でひそかに小説家になるために勉強していたのだろうか?。
 
 人生は不測の事態に満ち、何が起こるかわからない。遠い夢も日々の努力と研鑽でたぐり寄せる人もいる。
 

◎プロフィール

子ども時代、自分が新聞記事を書くとは夢にも思わなかった。パソコンやソフトが古くなり本業のデザインの引退は近い。それこそ出したい本がある。

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